第430話

「こんな時にゲムマが?」


「そうなんだ。分かった。それじゃあ行こうか、ジョット君」


「何? 行こうって、どこに?」


「決まっているでしょう? 私達もゲムマを倒しに行くの」


 ムムからコロニーに近くにゲムマが出現したと聞いたジョットに、カーリーが軍のコロニーの防衛部隊に協力してゲムマを退治しに行こうと提案する。


「このコロニーには皇帝陛下も皇族のシレイア様もいるから万が一のことがあったらいけなし、私が言うのもなんだけど、今ここで一番戦力になるのは私とジョット君なんだよ?」


 使っている機体はミレス・マキナだがアレス・マキナの機士であるジョットと、本来の愛機ではないがアレス・ランザを使っている同じくアレス・マキナの機士であるカーリー。


 確かにカーリーの言う通り、コロニーの防衛部隊だけよりもジョットとカーリーもゲムマとの戦いに協力した方がコロニーの安全を守れるだろう。そう考えたのはコロニーの防衛部隊も同じだったようで、カーリーが自分達もゲムマとの戦いに協力したいと防衛部隊に連絡を入れると二つ返事で許可が降りた。


「オーケー、許可貰ったよ。行くよ、ジョット君」


「分かった」


 ジョットがカーリーの言葉に頷き返事をすると、二人はコロニーの外へ出るために宇宙港へと向かう。すると宇宙港からコロニーの外へ出ようとした時、ジョットは視線を感じた気がしてそちらを見ると、物陰から金属製の全身鎧のような宇宙服を着ている人物がこちらを見ていた。


(何だアイツ? 宇宙港の作業員か? それにしては何か変だったような……?)


「どうしたの、ジョット君? もう戦闘は始まっているよ」


 宇宙港にいた鎧のような宇宙服を着ている人物に気を取られかけたジョットだったが、通信装置から聞こえてきたカーリーの言葉を聞いて意識を前方に向ける。アレス・ランザとミレス・コルヴォカッチャトーレはすでに宇宙空間に出ており、そこではカーリーの言う通りすでに防衛部隊とゲムマとの戦闘が始まっていた。


 コロニーの周辺に出現したゲムマは全部で七体。コロニーの防衛部隊は皇帝の護衛でついて来た親衛隊とも協力して、一体のゲムマに五機か六機で戦っているのだが、七体のゲムマはそれぞれ複数のミレス・マキナを相手に互角の勝負を繰り広げており、レーダーからゲムマのエネルギーを計測したムムが口を開く。


「七体のゲムマ全てが五つ星級……大盤振る舞いですね」


 ゲムマは内蔵しているエネルギーが高い個体ほど戦闘力が高く、頭部にある光る石の数が多くなるという特徴があり、頭部の石にちなんで一つ星級や二つ星級と戦闘力の階級を定めている。そして五つ星級の戦闘力はミレス・マキナ四機から六機を一体で相手にできる程で、それが七体も現れた今の状況は歴戦の機士でも絶望する者が出てもおかしくない状況であった。


「確かに五つ星級が七体はちょっと面倒くさいかもね。……ジョット君、今すぐアレを使える?」


「……今、マリーとシャルロットに確認を取ったら準備にもう少しかかるみたいだ」


 カーリーがジョットに聞くと、彼女と同じことを考えていたジョットはすでにマリーとシャルロットにある確認をするために連絡をしていたのだが、マリーとシャルロットとの連絡を終えると首を横に振った。


「そっか……。それじゃあ、今は少しでもゲムマの戦力を削りながら時間を稼ぐしかないってことね。……来たよ!」


 ジョットからの返答を聞いたカーリーが武器を構えながら残念そうに呟くと、七体のゲムマの一体がアレス・ランザとミレス・コルヴォカッチャトーレに向かって突撃してきた。

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