第415話
今回シャルロットが参加するトライアルが行われるのは、大清光帝国の正規軍が基地として使用している軍事用コロニーの一つであった。魅火鎚がコロニーの宇宙港に入ると、そこには魅火鎚以外にも軍のものとは違う民間の宇宙船も多数停泊していて、それを見たジーナが声を上げる。
「あれって大清光帝国でも有名な兵器メーカーの宇宙船だよね。もしかして今回のトライアルに参加するのかな?」
「そうですよ。今回のトライアルに参加する兵器メーカーは私達、正銀工房を含めて十八社。それらが持ち込んできたミレス・マキナがここで正規軍での採用をかけて競い合うのです。それであれが例の兵器メーカーです」
宇宙船の船体に描かれていた会社のエンブレムを見てジーナが言うとシャルロットが頷き答えると、宇宙港に並んで停泊している兵器メーカーの宇宙船の一つ、船体に銃弾のエンブレムが描かれている宇宙船を指差した。
「例のって……今回のトライアルで採用が決まっているっていう兵器メーカーか」
ジョットが聞くとシャルロットが頷く。
「そうです。シルバーブレッド・ファクトリー。高速戦闘用の装甲やスラスターなどの製造を得意として、技術力はそれなりに高いのですけど、トライアルに採用される機体を作れるのかと聞かれると微妙なところですね」
「ああ、思い出した。基本に忠実なって言えば聞こえはいいけど、工夫も浪漫もないつまらない製品しか作らない、見所のない兵器メーカーだったね」
シャルロットの説明を聞いてマリーもシルバーブレッド・ファクトリーについて思い出して言うと、シャルロットが肩をすくめる。
「
「つまり、今回のトライアル唯一の審査員である貴族の方が裏でシルバーブレッド・ファクトリーを後押ししていると言うことですね。……正規軍の次期採用ミレス・マキナは純粋な性能で決めるべきなのに、そんな一人の私情だけで決めるだなんて許せません」
皇族でありミレス・マキナの機士であるシレイアは不機嫌そうにそう言うとシャルロットの方を見る。
「シャルロット様、安心してください。私達がいる以上、そんな不公平な採用は絶対にさせませんから」
「ありがとうございます、シレイア様」
シレイアの言葉にシャルロットが頭を下げて礼を言う。
シャルロットがジョット達にここまでの護衛の依頼を出したのは、アレス・マキナの機士や大清光帝国の皇女と言った、軍に関わっている貴族でも無視できない肩書きを持つ彼らもトライアルに参加させることで、今回のトライアルで唯一の審査員である貴族に公平な審査をさせるためだった。そういう意味では今のところシャルロットの目論見をうまく進んでいたのだが……。
「……」
「? どうしました、ペルル? ……っ!? あ、あれは……!?」
話をしている最中、何かに気づいたペルルがシレイアの肩を小さく叩きある場所を指差すと、シレイアはペルルが指差した先を見て驚いた顔となる。
ペルルが指差したのは宇宙港の一番奥に停泊している、重武装でありながら船体に豪華な装飾が施されている大型の宇宙船で、シレイアは宇宙船を見ながら呆然と呟いた。
「あれは……お父様専用の宇宙船。どうしてここに……?」
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