第414話

「ちょっとそれってどういうこと? まるでジョット君のせいで貴女の機体がトライアルに勝てないみたいじゃない?」


 シャルロットの言葉にマリーが不機嫌そうに言うと、シャルロットは申し訳なさそうな表情となってジョットとマリーに謝る。


「……ごめんなさい。確かに今のは言い方が悪かったわね。でも、この件にジョットさんが関わっているのは確かなの」


「一体どういうこと?」


 まるで本当にミレス・コルヴォカッチャトーレがトライアルに勝ち残れないと言っているようなシャルロットにマリーが聞くと、シャルロットは自分の最近になって初めて聞いた話をマリー達に話しだす。


「実は今回のトライアルは審査員の独断によってすでに採用される機体が決まっているそうなのです。なんでもその機体は審査員である貴族の領地にある兵器メーカーが開発した機体だとか」


「待ってください。それは流石にあり得ないのではないですか?」


 シャルロットの話を聞いて、皇族でありながら優秀なミレス・マキナの機士でもあるシレイアが口をはさんできた。


「確か、大清光帝国のトライアルは数人の審査員が評価を出し合い、その上で厳正な審査をするはずです。確かに自分の領地の兵器メーカーが開発した機体に過剰な評価を出す審査員もいるかもしれませんが、審査員一人の判断でトライアルの結果が決まるのはあり得ません」


 シレイアはそう言うのだが、それに対してシャルロットは首を横に振った。


「普通ならそうなのですが、今回のトライアルを審査するのは問題の審査員一人だけなんです」


「トライアルの審査員が一人だけ? それはどうしてですか?」


「今回のトライアルで機体の評価をするはずだった審査員のほとんどが、最近で起きた事件などで降格させられたり謹慎処分になったからです」


 トライアルの審査員が一人しかいないと聞いて驚くシレイアが聞くと、シャルロットはジョットに視線を向ける。


「ある者は自作自演の海賊退治をしていたリューホウ王国のサクエン辺境伯家とアーチオン伯爵家と古くから繋がりがあり、何かしらの裏取引をしたのではないかと疑いをかけられました。またある者は領地内に特殊なゲムマの大群が現れた細木家の救援をせずに事態を静観して、その怠慢さを咎められました。最近では重大な星間共通法違反をした蜂屋家に隣接している領地を持ちながら蜂屋家の犯罪に気づかず、そこから蜂屋家に協力していたのではと嫌疑にかけられた者もいます。そしてこれらの出来事に関わっているのが……」


「俺ってことか」


 ジョットはシャルロットの言葉を引き継ぎ言うと、この最近の自分が体験してきた出来事を思い出す。


 確かにジョットはシャルロットが今言った事件の全てに関わっていた。そのほとんどが偶然巻き込まれたものではあるが、一年にも満たない短期間で事件が続いて起こった上に共通の人物が関わったことで、上層部の注目が集まり事態が大きくなった可能性も否定できなかった。


「なんとなく事情は分かったけどさ? やっぱりそれってジョット君は悪くないよね? 恨まれる覚えはないと思うんだけど?」


「そうね。マリーさんの言う通り、これは私の八つ当たりでしかないわね。……ジョットさん、すみませんでした」


「いや、俺は気にしていないから。……あっ。もしかして俺達に護衛の仕事を依頼したのって……?」


 ジョットはマリーに言われてもう一度謝ってきたシャルロットにそう言うと、何故彼女が自分達に護衛を依頼した理由に気づいてシレイアの方を見て、シャルロットもまたシレイアに視線を向けて頷く。


「はい。皇族であるシレイア様もいらっしゃったとなれば、例の審査員も公正な判断をしてくれると期待してジョットさん達に護衛を依頼したの」

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