第413話
「これがシャルロットが作った新しいミレス・マキナか」
アレックスに呼び出されてシャルロットと彼女が開発したミレス・マキナの護衛任務を与えられてから三日後。ジョット達は魅火鎚の格納庫で今回シャルロット達、正銀工房がトライアル用に開発したミレス・マキナを見せてもらっていた。
正銀工房が開発したミレス・マキナは、真道学園で以前行われた機械科技術対抗大会でジョットが使用した機体、ミレス・コルヴォアーラによく似た外見の機体だった。
今ここにある機体はミレス・コルヴォアーラよりも細身だが、単に細くなったというわけではなく無駄な部分をそぎ落としたという感じで、ミレス・コルヴォアーラよりも更に速く、そして力強くしたような印象をしていた。
「はい。見ての通り、この機体は機械科技術対抗大会でジョットさんに使っていただいたコルヴォアーラを改良したものです」
シャルロットがジョット達に向けて機体の説明をする。
「コルヴォアーラは学園が用意した訓練用の機体を改造した機体でしたが、この機体はフレームから独自に開発したもので、変形時間が短縮された上に速度と航続距離の向上に成功しました」
「ああ、あの飛行形態ね。……悔しいけど格好良かったよ」
シャルロットの説明にマリーが面白くなさそうな顔で返事をする。
機械科技術対抗大会でミレス・コルヴォアーラは人型から戦闘機に変形して、参加者全員を驚かせたことがある。同じ大会に出場したマリーも変形機能を持ちミレス・マキナを用意していたが、浪漫がある変形機能を先に出されたのが悔しいらしい。
シャルロットはマリーの言葉を聞いて小さく笑みを浮かべると機体の説明を続ける。
「それでこの機体は量産と整備のし易さも視野に入れて設計されています。コスト面から大会で使ったビーム兵器を内蔵した剣は装備されていませんが、両腕にはそれぞれ同じく大会で使った刀身が内蔵されていて長剣にもなるノコギリ型の武装と、光の散弾を放つビーム兵器が装備されていて、戦闘力は向上したと自負しています」
「ああ、確かにあの武装は使い易かったな」
ジョットはコルヴォアーラに装備されていた、ナタのような長剣に変形するノコギリ型の武装を思い出して頷く。それに光の散弾を放つビーム兵器も、主に高速で移動して近接戦闘を仕掛けるミレス・マキナ同士の戦闘では有効だと思われるし、それらを両腕に装備しているなら戦闘力は確かに向上していると見ていいだろう。
「ちょっと、ジョット君?」
自分のライバルである兵器メーカーの製品を褒めるジョットをマリーが軽く睨むと、妻の視線に気づいたジョットが慌ててシャルロットに話しかける。
「そ、そう言えばこの機体はなんて言う名前なんだ。コルヴォアーラを元にした機体だったら名前も同じなのか?」
「いいえ。この機体の名前はカッチャトーレ。『ミレス・コルヴォカッチャトーレ』と言います」
シャルロットは自分達が作った機体を見上げて機体名を言い、ジョットはそんな彼女に続けて話しかける。
「カッチャトーレか。……それでシャルロット? さっきからどこかつまらなそうに話しているけど、一体どうしたんだ?」
大清光帝国の正規軍に採用されるチャンスであるトライアルに自分達の機体を参加させるのは、技術者にとって最高の名誉であるらしい。しかしそれにしてはシャルロットはあまり嬉しそうに見えず、その事についてジョットが聞くとシャルロットは苦笑を浮かべて彼の方を見た。
「つまらなそう、ですか……。それは貴方にも原因があるんですよ、ジョットさん?」
〜後書き〜
シャルロットが用意した機体ミレス・コルヴォカッチャトーレの「コルヴォ」はイタリア語で「烏」、「カッチャトーレ」はイタリア語で「狩人」という意味です。
烏と狩人……組み合わせると中々に心強い響きだと思いませんか、貴公ら?
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