駅員服の男
裏メディアの件に剣崎は難しい顔。そう簡単には信じて貰えそうにないと思った狂はそれ以上言わなかった。
その後。眠りにつき、剣崎が仕事に行くと声かけた頃。おーい、と呼ぶ声が室内に響くも狂の姿はなく、雑に開いた窓から吹く風が静にレースカーテンを揺らす。
「すみません、
彼は剣崎よりも少し早く目を覚まし、薄暗い街を歩いていた。BMXで駅を二つ、三つと慣れたように越え。始発狙いで窓口に駆け込む。
「薬研? アイツなら数ヶ月前に辞めたぞ。仕事できる奴だが噛み合わなかったんだろうな、上司と」
――うわぉ、辞めてる。
「そっか、ありがと」
駅を出るや再びBMXに乗り込み、そこ近辺にあるアパートへ。しかし、此処に住んでいると噂の場所には『物件案内』が吊り下げられ退去。
「あー。もしかして、殺された?」
一人悩み、裏専門のSNSで『自警団』と検索すると【■■■@gh】とヒットしたのが一件。最後に更新たれたのは数ヶ月前。コメントは消されているが凍結はしてないらしく、ダイレクトメールを送る。
『少し会いたいんだけど……』
この【薬研】という男は正直にいうとしっかり話したことがない。
数ヶ月前。たまたま電車で爆睡してたときに『お客さん』と声かけられ、外に出るや目の前のホームで人身事故を目撃。千切れ飛んだ四肢や泣きながら痛みに歪ませる顔が狂のホームまで飛び血を振り撒きながらゴロリと転がる。悲鳴飛び交うホームで狂と声かけてきた駅員だけは異常に冷静で――ニコッと笑い、アカウントを名刺に書き込み渡されたのが知り合ったきっかけだった。
知っていることは、駅員で凄腕のハッカーでありクラッカーのアンチ野郎。殺し専門ではないが【死亡記事】を書くメディアと似たような趣味を持つ変わった人だということ。
たまにダイレクトメールで『○○駅で刺殺だそうです。観てきては如何でしょう』と妙なモノが来ては【殺しの美学】ではない【殺し映え】の現場を何個か紹介してくれた。剣崎にの資料の写真にいくつか見覚えがあり『まさかね』と何人か候補がいる中の一人。
『申し訳ありませんが、取り込み中なものでして会えそうにありません。ですが、離れていても情報提供ぐらいは出来ますよ』
朝早いというのに返事は意外と早い。切られる前にと素早く返す。
『あのね、知り合いに刑事さんがいて職場の調査書と別のメチャクチャ細かい誰かが作った資料があってさ。本人に聞くと“送られてくる”って言うから【
『あぁ、あの男嫌いなんで話したくもないんですが……その件でしたら』
話が長くなりそうだな、と駐輪場でBMXに股がりながらやり取りしているとトントンと肩を叩かれゆっくり振り向く。
剣崎よりも年下で少し若さはあるも華奢な体型。口調はとても丁寧でそれに反して声は少し低いが嫌でもない
「ん、あれ。……薬研?」
その言葉に男は帽子のつばを摘まみ、独特な深緑色の目を隠す。
「はい。たまたまとある殺し屋のお手伝いをしてまして後処理してたもので。邪魔するように貴方からメール来たものでハックしたら――これは運命でしょうか。メチャクチャ近くに居ましたぁ~アハハッ」
歳にしては喋り方が若いのか、単に変なだけか。あまり口では言いたくないが“妙に癖”が強い。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます