死亡記録
「はて、正義の味方さんに送りつけた記事の件ですが……。その前に“トレイ”とお呼びしてくださると助かります。本名好きではないので」
男、トレイは嫌そうに言うと知り合いから連絡かスマホを弄り出す。
「おやまぁ、早くこい、と。やれやれ」
急かされているのか溜め息をつき、薄く笑う。
「私も送り付けている記者とは違いますが“似たこと”はしてますねぇ。死は美しい、死こそ価値、と人により価値観は違いますが。私は“人の死を記録”するのが好きでして貴方と比べると劣っています。情報提供ぐらいはしますが自分からホイホイはしませんね。警察の方、私知りませんし」
アハハッと笑い混じりの言葉に“この人じゃない”と察した狂は「そう」と返すとBMXの停めを外す。
「まぁ、記者と対峙するなら手は貸しますよ。一応貴方のスマホをハックしてますから何かあったらご連絡ください。彼らも私と同じで事故現場によく顔出しますからね。
ついさっき、この近辺のビルで飛び降り自殺があった
トレイはそう言うと「そろそろ、お時間なので」と手を振りながら立ち去る。すると、近くからパトカーと救急車のサイレンが聞こえ――狂は顔をそっちに向けた。
BMXを押しながら赤いサイレンが点滅する場に行くと野次馬。そこからじゃ見えないな、と近くのビルに入り上から覗くと一人の男性が地面に伏していた。頭から血を流し、衝撃で首や四肢が折れ曲がり歪な形。綺麗でもない、心引かれるものではなかったがパーカーに入れていたスマホが震える。
【■■■@gh】
『これ、良くないですか?』
トレイから送られてきた写真。そこには、男が落ちた瞬間真下にいたのか。死に怯え、絶望した表情が画面いっぱいに収まっていた。
それついでに誰かのリンク。タップすると噂の“死亡記事”。
【
『名前:
性別:男性
歳: 55
身長:178
体重:不明
職業:社長
住所:○○――
実家:○○県――
電話番号:――
関係:――
死因:転落死
(追記:その他)
どうやら裏で金を回し、それがバレ殺されたようです。写真添付』
それは狂が探していた人物のSNSだった。知り合いなのか軽く記事にコメントしている。
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【■■■@gh】
『相変わらず悪趣味ですね』
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【
『おや、自警団じゃありませんか。俺と縁切ってBANまでされた方がどうして此処に』
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【■■■@gh】
『少し知り合いから貴方の話を聞きましてね。警察に意地悪しているとか。辞めてあげてくれませんかね。困ってるようですよ』
二人のやり取りは静かそうで何やらピリピリしており、一時的ブロックされたのかトレイのコメントが全て消える。そして、「君ですか」とスマホに夢中になっているとトレイとは違う声。一人と思いきや気配は二つ。
「おかしい。オレの中では一人なのに二人?」
ゆっくり振り向くとスーツ姿の男性が二人。一人はスマホを弄り、もう一人はニコニコヘラヘラしている掴み所がない人。
「神っち、アナタの悪戯が酷評ですって」
「オビオビ、俺悲しい」
「だから、辞めなさいと」
「だって、刑事なのに人殺してるんだぜ?」
二人の会話。取り残された感覚に狂は助けを求めるように剣崎に電話を掛け、パーカーに突っ込む。
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