汚れた資料

 食後に宝探しの続きをしようとしたが宿題のように山積みにされた茶封筒。おいおい、と手に取り中を開くやほとんどが過去の物。処理された物だった。


 無差別殺人事件。


 放火。


 通り魔。


 心中。


 細かい説明文と経緯が写真付きでパソコンで打ち込まれたモノから手書きで書かれた手作り満載なモノまで様々。しかし、どれも狂の心揺さぶるモノはなく、ふーん、と鼻であしらう程度。ザッと目を通すも物足りたく仕方なく上から何冊か持ってくることに。

 風呂に入ってくる、そう剣崎が姿を消すやリビングを資料で散らかす狂。面白くない、つまらない、面白くない、つまらない、とパスしまくった中に一時的に事件が急激に増えた年の資料が出てくる。

 数年前。いや、数ヶ月。参加はしなかったが“殺し映え”という殺し屋の中で流行った表で言う“SNS映え”。今でもたまにあるが前はデスゲーム形式で参加者が皆死んだと噂される。



 一枚目。

 噴水に沈む女性の皮膚を切り絵のように薔薇を掘った写真。血が出るないのギリギリな力加減で掘られ、強弱付いた“それ”は熟練の技。


 二枚目。

 バイクで暴走した男らの首をピアノ線で撥ね飛ばした写真。煽ったのか、怒り満ちた顔のままピアノ線が首にめり込み、勢いに任せ掻ききった。骨まるごと切断した痛み無き頭と花びらのように飛び散る血が絶妙。食い付くように見つめる。


 三枚目。

 写真と言うより悪趣味な死亡記事。何年何月何日にどこで誰が何で殺されたかを記された記事。殺した写真を元にメティアや剣崎の資料には書かれてない詳しいことまで書かれており、ストーカー臭放つ独特な気配にペラリペラリと捲る。


 その他にも目を引くものがあったが、一番気になったのは剣崎の資料と答え合わせをするように一緒に置かれた“死亡記事”。

 もっと悪趣味なことを言えば“裏月刊誌”または“裏週刊誌”なのか。提供者は書いてないものの【○月○日から○月○日までの死者数】と余程のマニアか。死亡事故、事件、年齢から時間帯まで変態と言いたくなるほどの細かさに口では言わないがこの記事には見覚えがある。


死亡記事オビチュアリー。アイツ、生きてるんだ。ってことは、クソ煩い奴もいるってこと? あーでも、もう一人好む奴いるしなぁ。あの人、生きてんのかな」


 と、思わず独り言を漏らすと「何か問題でも」と髪の毛をタオルで拭きながら上半身裸の剣崎。


「刑事さん、いつからこれ読んでる?」


「読んでない。勝手に届くから目を通してるだけだ」


 その言葉に「ははーん」と返すと、なんだ、と剣崎が隣に来ては突っかかる。


「これ、前に言った裏のメディアの人のだよ」


「は?」


「つまり刑事さんは――標的タゲってことだ」


「もっと分かるように言え」


「つまり貴方もいつかこうなります・・・・・・・・・・・・ってことだよ」

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