監禁?

 昼も食わず、庭の宝探しに没頭し気付けば夜となるが終わらない。足元を照らすUVライトと手の感覚を頼りに花を踏まないよう地べたに座りおさなごのようにワイワイしていると真っ暗な室内に明かりがつく。

 ガラガラと窓が開き、黒く大きな影が近づき咳払い。近所迷惑にならないよう抑えた声で一言。


「お前――何してる」


 疲れた不機嫌な声に狂は子供のように返す。


「お宝探し」


 ドヤ顔で言うと頭を叩かれ、痛ッ、と汚れた手で頭を押さえる。


「お宝とはなんだ? エロ本とかはないぞ」


 ありきたりな言葉に今日はクククッと小さく笑う。怒られているにも関わらず、土弄りを始め「こーれ」と取り出したのは繋がった大腸と小腸。剣崎の顔は恐ろしいほど無で――見つめ合いが続く。



 そして、静かに――。



「俺の家は退屈でぶっ倒れていると思ったが、楽しそうで何よりだ。宝探しがしたいなら好きなだけ探すといい」


 と、やはり前とは違い心を開いたか。薄く笑い大きな手が頭に乗る。


「まだ、形があるかは知らないが嫁を解体して『俺から離れないよう』庭にばら蒔いた。だから、もしかしたら、上手くいけばの話だが発掘やパズルのように揃うかもな。人骨や臓器が」


 悪な剣崎降臨。

 容赦ない言葉に狂は肩を震わせ笑う。


「(棒読み)うわー楽しそう。(小声で)イカれてる」


「お前よりは可愛いだろ」


 そんなのない。いや、あるな。

 知り合いのはずが親子のように言い合う。


「一旦、家に上がれ。飯買ってきた」


「あーい、ご飯。ご飯」


 立ち上がり、付いた土を叩くどころか家に一直線の狂を見てフッと剣崎は笑い小言。


「そう言えば“嫁”は子供が欲しいと言ってたな。殺したとき、子供がどうかと言っていたが――さて、どこに埋めたのか覚えてないな。アレ・・も彼女同様美しかった。命とはああいうものなのか」



 ――儚く弱い。花のように――



 剣崎は庭に向け言う。


「只今、今帰ったぞ」


 続けて。


「養子どうだ。悪くはないだろ」


 一人笑う彼を狂は一つ纏めにされたカーテンに身を隠し様子を伺い、同時にこう思った。



 ――オレよりも刑事さんが一段と“残酷で残忍”――



 パーカーを脱ぎ、白Tシャツ一枚になると「その姿始めて見るな」と剣崎が目を丸くする。


「え、あぁ。黒だと汚ればれないからさ。下にシャツ着てても基本脱がないし」


 恥ずかしくなり羽織直し、上で服を着替絵ようと土をばら撒きながら室内を歩く。二人とも着替え、ダイニングテーブルに押された冷めた牛丼をテレビも点けず静かなリビングで食す。美味しい、とも何も言わない静寂。

 だが、食べ終わる頃合いを見て剣崎が茶封筒いっぱいの資料を狂の目の前に投げ出す。


「過去の事件のデータだ。お前が使ってる部屋の隣にある書斎に山積みに置いてる。時間があったら目を遠し、少しでも美学磨いておけ」


「ダルッ」


「もしかしたら、お前の力を借りて解決することもあるかもしれんからな」


 予想外な言葉に食べる手が止まり、頬杖を付き考える。



 ――もしかしてオレ、監禁されてる――


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