あれから、二階の家具もない部屋に籠り。フローリングで体を冷やしながらも耳を当てる。剣崎が何をしているのか、聞き耳ではないが互いに表の生活や行動範囲はしてない。だから、せめて音だけでもとやるも――寝落ち。


「あれ?」


 レースカーテンから差し込む明かりに目を覚まし、スマホで時間を確認すると五時前。あの人何してるのかな、とゆっくり階段を降りると大きな独り言が聴こえた。


「今日は遅くなる。先に寝ててくれ」


 不思議に思いリビングに向かうと風呂上がりか。上半身裸でスラックス姿の剣崎。バスタオルで髪の毛をバサバサと水気を切りながら、一人突っ立って庭を見る。

 ストレスか。それとも、庭に死体やら臓器を土に混ぜ肥料としているのか。その語りは狂に対してではない。“誰か”に対して言ってる。



 心の中にいる悪い刑事か――。



 と、思ったが妙な気配はない。


「今日は晴れだ。雨より気持ちがいい・・・・・・だろ」


 その言葉で狂は少し感づく。


 ――庭もある意味ヤバイな、と。


「おい、狂。まだ寝てるのか。仕事行ってくるから静かにしてるんだぞ」


 バレぬよう部屋に戻り、端から端までコロコロ遊び時間を潰す。部屋の隅には剣崎か、烏かのどちらかが親切に必要な物を詰め込んだダンボール。中には充電器や着替え等。捨てようとした物があった。


「おい!!」


「あーはいはい。いってらっしゃあーい!!」


 大声で怒鳴り返す。玄関のドアが閉まる音が聴こえ、独り占めだー、とリビングに向かうやダイニングテーブルに紙。

 それには『注意事項』と記されていた。



『注意事項』

 ・俺の許可なく殺しはしない。

 ・殺すならアトリエで道具もそれ関係もすべてアトリエで管理すること。部下が来たら面倒なため。

 ・キッチン使うならレトルト。

 ・俺の許可を取ってから家を出ること。

        :

        :

        :



 他にも細かいことや束縛するような言葉が多くあり、なんならホテルから出なきゃよかった、と溜め息をつく。


「独占欲の塊じゃん。奥さんよく耐えたなぁ」


 褒めるところがズレてる。


 テーブルには気遣ったのか。半分こにされた菓子パンと野菜ジュース。仕方なくそれを口にしながら、テレビをつけだらけることに。

 しかし、ニュースばかりでつまらなく子供番組を観ようとするも早すぎてやってない。つまんない、とテレビを消し庭に出るや近くの花壇を弄る。



 湿った土。だが、手触りがなにか違う。

 ヌチャッと粘着質。いや、纏まりやすい。


 クンクン、と嗅ぐも嫌な匂いはしないが――。

 人を殺しているからこそ分かる、秘密。



「やっぱり当たってる。あの人、臓器とか肥料にして蒔いてるな」


 腐敗した腐った匂いがないのも不思議だが、アレを肥料にする独特な感性に笑う。


「“死は美しい”ってやってること残酷じゃん」


 剣崎の秘密を探るのが楽しくなり、帰ってくる間ほぼ狂は庭で過ごした。


「うわぉ!! 繋がった腸ある。やばぁーい」

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