帰り道

私は引き続き追われている。


少し遠回りにはなるが、飲み屋が並ぶ繁華街の方に足を向けた。

時間も遅く、人通りが多そうな道が繁華街くらいしか思い当たらなかったのだ。

酒に飲まれたサラリーマン達や、気が大きくなって騒ぐ学生達を見ながら急ぎ足で繁華街を抜けていく。


しかし、抜けることかなわず、酔っ払いサラリーマンに声をかけられる。


「お、おねーさん、一人?」


酒臭い。

自分も気をつけるべき対象に入っている自覚を持てていないサラリーマンだ。

オープンに見える脅威なので、陰から見てくるやつよりかはマシというべきか。

それでも、いくら追われているとはいえこのサラリーマンに守る甲斐性などないだろう。

私は曖昧な笑顔を浮かべて会釈して、その横をすり抜けようとする。


「一人は危ないよー、送って行こうか?」


しかし、サラリーマンがそれを許さずに引き続き声をかけてきた。

目が血走ってて、鼻息も荒く見える。

こんなの、一人で行くより送ってもらったりしたら大変なことになる。

送り狼にでもなるつもりなのだろうけど。


鞄の中に潜ませたスタンガンに手を添える。

護身用として売られていたものだが、実際に身を守れるかはわからない。

もし取り上げられてしまえば逆に危険だ。


ただ、放っておいてもダメなら一か八かで使うしかないかと思っていると、サラリーマンの連れが止めに入った。


「おい、やめろ。お姉さん怖がってるよ。すみません」

「あれー、ほんとー?いやーすみませーん」


サラリーマンの連れに頭を抑えられる酔っ払い。

謝る二人組に会釈をして、そのまま逃げるように繁華街を抜けていく。


人通りが多いところって言っても飲み屋街は失敗だった。

やはり、急ごう。

相変わらず追いかけられている気はするが、遠回りしている方がむしろ危ないような気がしてきた。

切り替えて、彼の家に急ぐことにした。

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