第16話

16話

◉ぐしゃぐしゃ


「アリーナ。今日が最後の夜だ。朝までずっと起きてていいかい」

「私もそれお願いしようと思ってさっきちょっとだけバスで寝た」

 

「好きだようアリーナ!」

「私の方がだし!」


「アリーナ。指輪似合っているよ」

「アナタにも似合っているわ。無くさないでね。2人で選んだ指輪」

「無くすもんか。でも、アリーナは困ったら売れよ?」

「ヤダ!」

「そう言うからもう一つ買ったよ。所持金ギリギリだけどね。ハイこれ。ネックレス。これはペアじゃないからいざって時は売るんだよ?」


「いつの間に…」

「下見した日に目を付けてたんだ。きれいだな。アリーナに似合うだろうなって」


 僕はカジノで負けた場合用に持ってきてたお金を全て使った。もう素寒貧だ。別にいい、日本に帰ればまだ少しの余裕はある。


 アリーナは泣いて喜んでくれた。その涙がどういう感情からのものか僕にもアリーナ本人にもわからなかった。ただ、涙が止まらない。


「なんでアナタが泣くわけ?」


 不思議だ。僕も泣いていたらしい。アリーナといると泣いてばかりだ。


 …泣いてばかりでいいからずっと一緒にいたかった。


 僕らの最後の夜は2人とも涙でぐしゃぐしゃだった。

 

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