新宝島・西之島

 「尖閣諸島を寄こせ。言うことを聞かなければ、核を落とすぞ」「うざ!」「ちょっと待て😠」と現れた米国。「奇行に走れば、完全終結させてやる」。米国にとって経済的にも主権的にも中酷は最大の敵国。今までは、圧倒的不利な経済状況でも安価で品物が手に入るから、見て見ぬふりをしていたが、そんなの関係ねぇ、自国ファーストだと唾を吐き散らす米国大統領によって、表立って敵だとは言わなかった事なかれ主義を吹き飛ばし、「あいつら邪魔なんだよな、邪魔する者は敵だぁ」と露骨なほど牙を剝いた。脅しや脅迫されてびくびく観ていた世界も米国が「中酷は敵だ」と明言したことで「そうだそうだ」と中酷擁護は鳴りを潜めた。それに並行して勢いづいていた中酷経済は、おバカさんな国政運営で足元から火を噴き、崩壊に向かってまっしぐら。国内外からクレームが殺到する中、中酷・秀欣平国家主席は任期延長の条件でもある台湾侵攻に意欲を見せていたが、強酸党のお家芸である賄賂・中抜きは収まらず、行政の高官に留まらず軍部にまで粛清が波及し、まともに闘える状態にはなかった。

 強酸党の長老たちからもやんやんやの愚痴ばかりが聞こえてくる。金の力で黙らせていた愚行も今は金がなく「やるならやってみろ。終わるのはお前らだ」と返される始末。世界で一番の反社国と世界に任命された露西亜との関係も具体的証拠が上げられないまま、「関係あり」と断言され、お友達になってくれる国は先進国にはおらず、配下になるのは貧しい国ばかり。稼げない配下を養うには金がいる。その金がない。なければ、配下から金を寄こせ寄こせ、さもなければ、借りた金返さないぞと脅される始末。中酷民度が他国からやり返される自業自得状態。

 そこで秀欣平は考えました。金がなければ金を掛けずに相手国を陥れよう、と。尖閣諸島問題で言うことを聞かない日本に対し、東シナ海に共同開発水域を設けようと画策するが、契約は見せかけで「おらが物」と掌返しを見抜かれてあっさりおじゃん。そこに西之島が現れた。ちっぽけな島は、実は海底に潜む巨大な姿の一部だった。あれよあれよと噴火を繰り返し、見る見る面積を広げていった。猪口とした頭角の下には富士山に匹敵する姿が隠されていた。さらに日本のEEZが広がる一方に。

 そこで中酷は、日本を跨いでも関係なく、我が国の領土だと主張し始めた。何も新しいもの生み出せず、他人の物を略奪か盗作しかしてこなかった国民性はその悪性に気づけることもなく、言いたい放題のありさま。そこで悪代官・秀欣平は、西之島周辺で勝手にサンゴ漁を開始する。一般漁船を手荒く排除で記ねぇだろうと嘯く中酷の悪行に目を光らせていた米国が割り込んできた。GDPで米国を追い抜いて世界一になると豪語していた中酷もいまや実質的な指標は地に落ちて立ち直れる気配さえない。秀欣平は手拭いを噛み締め、それを強く引っ張ることでしか自分の存在価値を感じられないでいた。

 日本には西之島以外にも福岡ノ場があり、形成と消失を繰り返している島がある。日頃の被害を補うように火山大国の恵みだと考えるしかない。悲しくも有難いことだ。天は決して人を見捨てないと誰かが言ったが、見放しては欲しくないものだ。天然資源やエネルギー資源の存在を期待してやまない。

 昔、西洋から日本は黄金の国・ジパングと呼ばれていたが、今、西之島・福徳岡ノ場が埋蔵資源の可能性があり、新宝島と呼ばれる時代もそう遠くないだろう。少なくともEEZは拡大し、世界有数の領域を日本は有していることには変わりない。

 

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