[ 246 ] 総力戦2
「ピヨ! もっと速度を!」
空中戦に慣れてきた僕らはゼクトを上回っていた。それを可能にしていたのはピヨの予測不能な動きと、装備のおかげだ。
空中戦では縦方向の重力魔法であるジオグランツとジオフォルテは使いにくく、横方向に効くゼレンに頼るしかない。重ねがけできないゼレンなら装備の分、僕の方が強い。
「はぁ!」
「くっ」
しかしおかしい。ゼクトの肩に足に斬撃が決まるが、まるでダメージなんてなかったかのように動いてくる。まさか回復まで使えるのか?そんなわけ……。
「これならどうだ! ラーゼライトロンベ!」
ゼクトが上空に上がると、両手には台風を濃縮したような塊が現れた。それを胸の前で一つに合わせると、巨大な竜巻が僕に向けて放たれる。おそらく風魔法★練度8の魔法だ。ピヨの風魔法では避けきれない。
「ゼレン・オルト・ツヴァイ・ヴェルト!」
自分にゼレンを使い緊急回避を行うと、予見していたかのようにゼクトが巨剣で襲いかかってきた。
が、なぜか剣に力がこもっていない。
「ロイエ、そのまま聞け」
「え?」
ゼクトの声が急に男性の声になった。
ハウリングラウトで声を変えていたのか。
しかし、どこか聞いたことのある声だ。
「実は俺たちの後方にもう1人護衛班がいる」
「なんだって……」
「俺がそいつの相手をするから、お前はこのままリシトと戦ってる冒険者を援護しろ」
「え、どういうこと? やっぱりゼクトは僕らの仲間なの?」
「ああ、アルノマールは気付いてるはずだ」
確かに僕と一緒にゼクトと戦うと言っていたアルノマールは、ザイードと戦っている。
「隠れてるもう1人の護衛班は遠距離系の回復術師だ。奴を倒さない限り、リシトもザイードも倒すことはできない」
どうりでさっきからゼクトにダメージを負わせてるはずなのに、効いていないわけだ……。遠距離で回復されていたのか。
「アルノマールがザイードの注意をひいてる今しかない」
ゼクトがチラッとザイードとリシトへ視線を落とした。釣られて僕も視線を向ける。
リシトは、雷に耐性をつけるためか身体に岩を纏い、巨大な岩の兵士へと変貌していた。無数のメルクーアレッタがルヴィドさんやミルトを攻撃しながら暴れている。
一方ザイードをみると、こっちはこっちで雷と風のダブルだったらしく、精霊化したザイードの雷攻撃をテトラさんが岩で防ぎながら、レーヴェとアルノマールが火炎攻撃をしているが風の壁で効かないらしい。
「信じていいんだね?」
「ああ、お父さんと母さんに誓って」
「え……。まさかゼクトは――」
「行くぞ! 時間との勝負だ!」
そのままゼクトが後方の草むらに飛んでいったのを見て、僕も巨人兵となったリシトの元へ飛んだ。
「ジオグランツ・オルト・ツヴァイ・ヴェルト!」
最大重力が巨人兵となったリシトを襲う。動きが鈍くなったところへ、ミルトがヴァッサーで水をかけると、ルヴィドさんが雷攻撃で感電させた。
「なんなのよー!」
「このまま重力で潰されるか、岩の鎧を脱ぎ捨てて感電するか、好きな方に選べ!」
「くぅう!」
ミシミシと音を立てて地面にめり込んでいく巨人兵。2択を迫られたリシトは判断を迷い、巨人兵と共に潰された。
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