[ 247 ] 総力戦3
市長が僕の動きをみて、対ゼクトの空中戦用に対していたハリルベルとシルフィをザイードに向かわせたようだ。ザイードの笑い声が聞こえた。
「ガハハハ! 5人掛かりでこの程度か?」
いまのうちにリシトだけでも潰さないと! 重力で潰れた巨人への攻撃はやめない。リシトには岩の鎧よりもやっかいなクローネによる精霊化がある。あれならば重力もほとんど効かないだろう。
「ルヴィドさん。リシトが出てきたらすぐに攻撃を」
「ああ、任せろ」
空を飛んでルヴィド達と合流すると、リシトの出方を待った。そのままやられてくれればラッキーだけど……。そんな悠長なことを思っていた僕は、突然ミルトに蹴り飛ばされた。
「がはっ!」
「ミルト?!」
気付くと地面から生えた鋭いサンドシルドが、ミルトの身体を貫いていた。
「ミルトォォオオオオ!」
「ルヴィドさん下だ!」
水で地面を柔らかくしたり穴を開けて、地面からの土魔法攻撃……。やられた。これに対抗する手段を僕らは持っていない。
「クーア・オルト!」
「ありがとうロイエくん!」
「ピヨ! ミルトを連れて遠くへ!」
「わかったピヨ!」
とりあえずクーアで怪我は治ったはずだが、気絶してしまっているミルトをピヨに託すと、地面からは次々と岩が突き上げてくる。
「くっ! 私の雷では……!」
敵が地面の中にいるのでは、雷攻撃は効かない。僕の重力魔法でもどこにいるのかわからないと当てようがない。
次々と襲いくるザントシルドを、避けながらクーアで回復する持久戦になってしまった。掘り起こされた地面は柔らかく、柔らかい……?ならば!
「ジオグランツ・オルト・ツヴァイ・ヴェルト!」
「うわ!」
柔らかく耕された地面が浮き上がる。地面の中はリシトによる水と土魔法でふわふわになってるなら、浮かせるのは簡単だ!
「くっ!」
「そこか!」
僕は重力範囲内のリシトに対し、上と下二つの重力をぶつけて押し潰した。地面に押し込むと逃げられるならリシトを倒すには空中しかない!クローネ化が解けてる今のうちだ!
「ぐうう、しかたないわね! ザントシルドクローネ」
まずい、まさか土魔法まで練度★9だったのか!あれだとルヴィドさんの魔法が効かない!リシトがクローネで完全に精霊化する前に仕留めないと!
リシトを重力で挟んでる最中、それは頭の中に響いた。
【重力魔法:シュヴァルツェスグランツが解放されました】
?!
これは練度★8のブラックホール魔法?!これなら!
「ふははは! これならあんたたちの魔法は全く効かないわ!」
「それはどうでしょう。シュヴァルツェスグランツ!!」
突如現れた黒い塊。レーラの時と同じだ。クローネで精霊化したロートすら飲み込んだブラックホール……。まずい、これ僕も吸われるのでは……?!
近くにいるルヴィドさんまで吸われてしまう……。僕たちだけ効果を弱くするにはどうすれば……! これだ!
「フリーデルシルド!」
黄色い魔法陣が僕とルヴィドさんにだけ広がると、引っ張られていた力が無くなった。
「くそお! 私がこんなところで!! あああ〜!」
変な声を上げながらリシトはブラックホールに飲み込まれて、ブラックホールは消滅した。
「はぁはぁ、やった……」
「流石に私も死ぬかと思いましたよ。ロイエくん」
「レーラがこの魔法のデメリットを教えててくれなければ、僕たちも飲み込まるところでした」
術者すら飲み込むブラックホール。レーラが命かけて教えてくれたからこそ、いま僕らは勝つことができた。
「ロイエー!」
「ピヨ! ザイードのところへ飛んでくれ!」
「わかったピヨ!」
「ルヴィドさんはミルトをお願いします!」
「ああ、わかった!」
なんとかリシトを倒した僕は、魔力不足が近づいた身体に鞭打ってすぐにザイードの元へ向かった。
「おぇ……」
「ロイエ? 大丈夫ピヨ?」
「うん、ブルーポーションを飲んでおこうかな」
ピヨに運んでもらいながら魔力を回復させるが、魔力が回復しない……。練度の高い魔法を使いすぎたせいか、僕の魔力回路はブルーポーションすら受付ない状態まで疲弊してしまったようだ。
「まずいな……」
これではザイードの元へ向かったとしても、フリーデルシルドも、シュヴァルツェスグランツも使えない……。いや、それでも向かうことに意味はあるはずだ。
「ピヨ! 急いで!」
「わかったピヨ!」
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