[ 245 ] 総力戦1
「グハハハ! 先手はもらった! アダサーベン・オルト・ヴェルト!」
発動速度を優先して、ザイードは低レベルのアダサーベンを選択。とてつもない速さだ。練度★9の魔法使いともなると魔力の扱いが上手い。
こちらが迎撃の魔法を唱えるより速く、空に舞った無数の雷の手裏剣が僕らに向かって飛来した。
「テトラ!」
「任せて! ザントシルト・オルト・ヴェルト!」
格子状に編まれた砂の盾が、僕らの前に現れるとザイードの範囲攻撃を防ぎ、そのまま変形。ザイードとリシト、ゼクトの間に壁を作って分断させた。
「行くぞ! お前たち!」
アルノマールの合図を受けて、それぞれが動き出す。真っ先に動いたのはルヴィドさんとミルト。リシトに向かって走り出す。
「あらあら、イケメンとお嬢ちゃんが相手なのね、遊んであげるわ。メルクーアレッタ・オルト・ヴェルト」
「ミルト!」
「任せて! ハウリンググリーゼルラウト!」
ミルトが氷魔法のグリーゼルと、空気を広げる風魔法のハウリングラウトを組み合わせた合体魔法を発動させた。
グリーゼルは練度★1で発動も速いから対水魔法相手には最適な選択だが、相手がオルト・ヴェルトまで唱えているとカバーしきれない。物量で押される。
それをミルトは、ハウリングラウトと合わせる事で、より広範囲の魔法へ昇華させたようだ。
リシトの放ったメルクーアレッタは、瞬時に凍結され地に落ちた。
「あらやだ。氷と風のダブルなのね。困ったわ」
「さらにこれは防げまい! クラウンクロイツ・オルト・ヴェルト!」
ルヴィドさんの放った雷の剣が空を舞い、リシトを包囲し四方から畳み掛けた。
「ぎゃぁあああ!」
触れただけで感電する雷魔法は、水魔法では防ぎきれない。勝負あった。
「ああぁあああ……。なんてね」
雷に打たれて今もバチバチと放電しているリシトは、まったくダメージがないかの如く、平然と立っている。
「私たちは、王の護衛よ? ただの水魔法使いなわけないじゃない」
「バカな、雷が効いていない?!」
「雷が効かない属性って、何かしらねぇ」
「まさか……。水と土のダブルだと?!」
「正解、私の弱点は無くなったわよ? どーする?どーする?」
おかしい。いくら土魔法使いでも、生身で雷魔法を受けて平気なわけがない。なにかカラクリが……。
「ロイエ! 他の者の戦いに気を取られるな!」
「は、はい!」
そうだ。僕はゼクトを抑えておかないと、、彼の重力魔法はテトラさんが作ってくれた壁なんて貫通してしまう。
「ジオグランツ・オルト・ツヴァイ・ヴェルト!」
ゼクトの周囲に重力魔法を展開したのに、彼女には全く効いていないようだ。元々重力魔法を展開済みで中和している?
僕の頭に疑問が浮かんだ瞬間だった。ゼクトが急加速するとその巨大な剣で振りかぶってきた。
「フリューネル!」
ピヨの咄嗟の機転でギリギリ回避すると、ガン!とゼクトの剣が地面をえぐる。
僕も慌てて抜刀し、態勢を整えると自分に重力魔法をかけて軽くし飛びかかった。
「ピヨ!風魔法は任せた!」
「わかったピヨ!」
「ふ、そこの鳥が風魔法を使えるようだが、果たしてそんな付け焼きの連携で、風と重力を操る私を倒せるのか?」
地面から切り上げられた巨大な剣を破壊剣ゼーゲドルヒで受けると、僕はそのまま空中へ打ち上げられた。
「くっ」
「アレストルム!」
飛ばされた先のピヨが固めた空気の足場に飛び乗ると、追撃せんと飛んできたゼクトを迎え撃つため、僕は破壊剣を構えた。
「ロイエ、ピヨを信じてピヨ! アルノマールと一緒にたくさん特訓したピヨ!」
「わかった! ピヨに合わせるよ!」
「行くピヨ! ヴィベルスルフト・オルト!」
風魔法★練度5の連続フリューネル。いつのまにかこんな魔法まで……。ピヨの努力は僕の想像を超えていた。
「ハァアアアア!!」
「フッ! その場限りの連携など」
ガキン! ガリガリガリガリ!
ゼクトの振りかぶった巨剣を破壊剣ゼーゲドルヒが受け止めると、衝撃をうけた破壊剣が振動しゼクトの剣を破壊し始める。
「ちっ、なんだこの剣は――。ハァ!」
ゼクトが剣を振り抜くと、風魔法を駆使して僕の背後へ周り横凪に一閃。ピヨが風魔法を操作してそれを回避。
しかし、予見してたの如くゼクトが急加速にて距離を詰めると、同時に重力魔法で僕の動きを鈍らせ巨剣を叩きつけてきた。
「ロイエ!」
「くっ!」
ガキン! ガリガリガリガリ!
受け止めた斬撃で破壊剣が振動すると、ゼクトが引いた。
「危なかったピヨ。ごめんロイエ」
「僕がフォローするよ! 攻めよう!」
「わかったピヨ!」
僕たちとゼクトの空中戦は、さらに激しさを増した。
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