[ 240 ] 強者
テトラさんにより閉じ込められ石の塊となったボスブラオヴォルフに、店長が近づくと魔法を唱えた。
「ヴァルムヴァント・オルト」
魔法操作が得意な店長は、器用に炎の結界を岩の下に這わせてコンロのように岩を炒め始めた。
「いやー、こんな大きなブラオヴォルフは初めて食うなー。よしよし、このままじっくりだな」
「だねー! おいしそう」
おかしいおかしい。この2人なにをやってるんだ。っていうか、僕らの苦戦していたボスブラオヴォルフがこんな簡単に……。
「テトラさんさっきのはどうやって……」
「ん? ああ、ここら辺一帯の全ての土は私が支配下に置いてからね! ワンコが使える土はないよ」
なるほど、テトラさんが土魔法で先に全ての土を操ればボスブラオヴォルフが操れる土がなくなる……というわけか。土魔法同士の戦いは先手必勝なんだと初めて知った。
「テトラだと……?」
「カノーネさん知っているんですか?」
「会った事はなかったが、大地のテトラといえばSランク冒険者の中でも随一の土魔法の使い手として有名だ」
「え……。そんなすごい人だったんですか?!」
「それに噂によれば、あの見た目で実年齢は……、
トップシークレットを聞こうとした時だった。
恐ろしいほどの殺気が僕らを襲った。
「ひっ」
「そこ、何の話をしているんですかー?」
「なんでもございません!」
僕は金輪際この話題には触れてはいけないと心に誓った。そうこうしてる間にも、店長による調理は進み岩の中から聞こえていた鳴き声はだんだん小さくなった。
「あの、店長。そのボスブラオヴォルフは僕が倒したいんですけど、いいですか?」
「ん? おお、そうなのか? わりぃな、テトラと美味しそうなモンスターの話をしていたらブラオヴォルフはどうだって話になってよ」
「どんな会話ですか……」
「モンスターは殺すと消えちまうからな。殺さない程度に炒めてあるぜ? 俺らはあっちのをもらうとするか」
「あっちの?」
店長の視線に合わせて振り返ると、林の中からもう一匹のボスブラオヴォルフが姿を現した。
「んじゃ早いところ、こっちを倒してくれ」
「はい! ジオグランツ・オルト・ツヴァイ・ヴェルト!」
テトラさんが固めてた岩を、ボスブラオヴォルフごと重力魔法で押しつぶす。僕の魔法が発動したのを見てテトラさんが土魔法を解除すると、元々弱っていたからか重力魔法を受けたボスブラオヴォルフは一瞬で絶命し泡となって消え、白い魔石だけが残った。
「やったな。ロイエ」
「ええ、カノーネさん」
穴の中から白い魔石を回収して、地上へ出た時だった。
「ロイエー!」
「ロイエさーん!」
研究所の方からハリルベルとシルフィ、それとロゼがやってきた。
「さっきの爆発はなんです?! 出航準備をしていたら聞こえたのですけど……ブラオヴォルフ?!」
遠目に迫ってきているボスブラオヴォルフをみてロゼ達は臨戦体制になった。まだ距離があるし、これだけの冒険者がいるからか、さすがのボスモンスターも躊躇しているようだ。
「テトラさん、あっちのボスブラオヴォルフもお願いできますか?」
「いいよー、捕まえちゃおうか」
テトラさんへボスブラオヴォルフの対処をお願いした直後、僕ら全員を重力攻撃が襲った。
「な! ぐぅうう!」
「ぅ……」
「うおっ!」
「ロイエ!」
ハリルベルの声にハッとなり、すぐに反重力魔法を発動させる。
「ジ、ジオグランツ・オルト・ツヴァイ・ヴェルト!」
超広範囲重力魔法に対抗して、僕も反対方向に重力を発動させて緩和させる……が、敵の重力魔法の方が強い! 確実に僕より練度が上の魔法使いだ。同じであれば装備の差で勝てるはずなのに。
「困るな。勝手に魔吸石を使われては」
声のした方へ目を向けると、ゼクトと見知らぬ2人の男が立っていた。
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