[ 195 ] 宴会/中盤
「シルフィ大丈夫かな……」
「ロゼに任せるしかないよ」
ロゼもシルフィも戻らないまま宴会の時間になり、ギルドのみんなは何食わぬ顔で食事を始めた。
「ロイエさん飲んでますか?」
「いや、僕未成年ですけど……」
「後一ヶ月ですよね? 誤差ですよ」
「そういうわけには……。ところでシルフィさんはあのままでいいんですか?」
「あー、シルは昔から少し被害妄想が激しいんですよ」
「そ、そうなんだ……」
初めて会った時からおとなしい人という印象が使ったけど……。そういう人ほど危ないというのはよく聞いたことがある。
「シルがハリルベル君に告白したんだけど、その次の日からよ。私がハリルベル君の依頼の報告を受けていたら浮気だと泣き出しっちゃいましたし」
「……すごい被害妄想ですね」
「まぁね、最近は女性の依頼主の依頼は受けさせないとか、行き過ぎているところがあって、トロイとも頭を抱えているんですよ」
それは、やりすぎだ……。狂気すら感じる……。
現代でも地雷系女子という言葉があったけど、まさにシルフィはそれなのかもしれない。
「ロゼちゃんの泊まってる宿の大浴場に行ってきたんでしょ?」
「ええ、そうですけど……」
「なんとか誤解を解くしかないね。ロゼちゃんに任せて私達は楽しんだらいいと思いますよ。実際どうしようもないし」
「そうですか……」
ハリルベルとシルフィが解決しなきゃいけない問題だ、男女の事に疎い僕が口を出すべきじゃないか……。もやもやしたものはあるが、諦めて宴会を楽しむことにした。僕の帰還を祝って開いてもらった宴会だ。主役の僕は浮かない顔をすべきじゃないな。
「トロイ……マスター、本日は宴会を開いて頂いてありがとうござます」
「や、やめてほしいっす。ロイエさん……。ギルドのみんなも、僕自身もマスターだなんて思ってないっす」
「そう、ですか……」
「はいっす。今まで通り名前で呼んで欲しいっす」
「わかりました。トロイさん」
「今日は僕らに気を遣わずに、ゆっくりしてほしいっす」
やはりルーエに騙されていたとはいえ、負い目が強いみたいだ。トロイさんは率先しギルドの面々のお酒を注ぎに回っている。
「へーい! 若鳥のフォレスト蒸しとフォレストサラダのお待ちー!」
元気な声と共に店長が料理を持って現れた。
「お? 大量注文が入って手伝いを急遽募集してたからやってるんだが、またロイエか。良く会うな」
「それはこっちのセリフですよ……。どこにもで出てきますね」
「ハハハ、たまたまだって」
「それにしても店長、嬉しそうですね」
「当たり前だろ!見たことのない料理ばっかりなんだぞ! 楽しくてしょうがねぇよ!」
それは何よりだ。正直僕は店長の相手をしている暇はないので、勝手に楽しんでもらえるなら願ったりだ。
今後のスケジュール次第だけど、マスターの言っていたアウスによるクーデータの話が本当ならナッシュには寄らずに、フォレストの西の海岸から船でヘクセライを目指した方が良いかもしれない。そうなったら店長とはここでお別れになる。
「そうだ、ロイエ。鰹節ってのは、これくらいでいいのか?」
店長がポーチから作り途中の鰹節を取り出して見せてきた。良くできてる……でも昔テレビのニュースでみた鰹節はもう少し乾燥していた気がするな。
「もう少しだと思いますよ」
「そうか。俺もそんな気はしていたんだ。もう少し弱火で燻してみるか。ヴェルア」
店長がヴェルアを唱えたときだった。
「あっ!!!!!」
ハリルベルが大きな声を出すと、飲みすぎて床に転がってるガンツさんを思いっきり踏みつけながら、店長の元へ駆け寄ってきた
「こ、これ……! 魔力圧縮ですよね?! あの! あなたは一体?!」
「あ? 俺か? 店長だ」
「すごい、魔力が完璧にコントールされている……どうやってこれほどの」
「どうやってもなにも、適当だぞ」
「店長さん! 俺に! その魔力圧縮の方法を教えてください!」
みんなが唖然とする中、ハリルベルが店長に向けて土下座した。
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