[ 191 ] 再開と食事
「クーデター? 詳しく聞かせてもらってもいいですか?」
「うむ、しかし話をするならアルノマールにも同席してもらった方が良いじゃろう。今日は忙しいと聞いてるから、その話は明日以降にしようかね」
「……わかりました」
王の暗殺? クーデター?
アウスが何か証拠を得たということか? でなければいきなりそんな話にはならないはすだ。
僕らから見れば、王が星食いを使い各地から回復術師を保護という名目で誘拐して、不老不死の実験材料にされている事実は許されることではない。
しかし、星食い達が各地のフィクスブルートから魔力を吸ったとして、それが民に何の関係がある?
王が不老不死になろうとも国が安定するなら民は歓迎する。そうなれば王を討とうとする僕らは犯罪者になる。
現にナッシュのフィクスブルートは、かなり前に魔力を失っていたみたいだけど、それでも緑が枯れたり水が枯渇したりといった自然災害などは発生していない。
ちゃんとした理由と、準備、味方をより多くつけないと王を打つなど夢のまた夢だ。ロートのような護衛騎士がまだ何人も控えてるなら、僕らのような雑魚が束になったところで勝てるわけもない……。レーラさんでさえ相打ちが限界だったのに……。
「……イエ。おーい、ロイエー?」
「え? なに?」
「どうした? ボケッとして」
「ごめん。少し考え事をしてて……」
気に入ったのか、ピヨはマスターの帽子の上でくつろいでいる。
「どうじゃ、久しぶりにあったんじゃ。飯でも行こうかね」
「お腹すいたピヨ〜」
「マスターの奢りだよな?」
「調子のいい奴め……。わしは万年金欠じゃというのに……仕方ないのぉ」
「でしたら、ここから近いのは役所の中のレストランがオススメですわ」
――ハリルベルが模擬戦闘でボロボロになった洋服を着替えると、みんなでレストランへと足を運んだ。
役所の中のレストランだけど、昼時を少し過ぎているからか人はまばらで僕ら以外には数人しかいない。
「さて飯が来るまで現状の確認をしておくかの。ロイエのランクはいくつになったんじゃ?」
「ランクですか? Dですね」
「お、同じだな!」
「ハリルベルも?」
「ああ、誰かさんが馬鹿みたいに無理難題の依頼を持ってくるからな……はぁ」
何を思い出したのか、ハリルベルの表情がどんどん暗くなる。アルノマールの元で修行したなら、何があったかだいたい察しはつく……。
「練度はどうじゃ?」
「重力が練度★4で、回復魔法が練度★6です」
「ふむ、ちと重力魔法の練度の伸びが遅いかの?」
「そうですね……」
確かに言われてみると、ルヴィドさんやトロイ、ラッセさんなど練度★6を習得している人は多い。練度★4は確かに少し低いかもしれない。
「ハリルベルはどうなの?」
「俺か? なんと練度★5だ!」
「ナッシュを出てから一つしか上がっておらんじゃろが、偉そうに」
「充分すごいよ」
「だろー?」
「ところで、マスターのメルクーアレッタをヴェルアで防いでいたけど、どうやったの?」
「ああ、あれか。あれは――「お待たせしました!」
ハリルベルから答えを聞く前に、頼んでいた料理が運ばれてきてしまった。
「って、店長。何してるんですか……」
「おう、誰かと思ったらロイエか。なーに、ここで少しアルバイトしながら料理の研究をな」
「下の街で、うろうろしてませんでした?」
「いやぁ、どの店の味を盗むか調べてたらよ、この木の上のレストランは昼間しかやらねーっていうから、先に押さえておこうと思ってな」
「そ、そうですか」
僕らがギルドに寄ってる間にあちこち調べたのか。相変わらず行動力のある人だな……。
「この町では見たことない顔じゃが……」
「あ、デザントから一緒にきた店長さんです」
「テンチョウ? 変な名前だな……」
「デザントの飲食店で店長をやってるんだけど、まぁそこは触れないであげて……。彼はナッシュまで行きたいというのでデザントから同行したんだ」
「おう、ロイエの仲間かよろしくな! これは店からのサービスだ! どんどん食ってくれ!」
今日はいつにも増して機嫌が良い店長だったが、厨房から「新入り!勝手にサービスすんな!」と怒鳴り声が飛んできた。
「ははは。ダメだってよ、やっぱり金は払ってくれ」
「なんじゃ残念じゃのお」
「デザントの俺の店に来た時はサービスすっからよ。じゃぁな。ゆっくり食ってくれ」
「店長のご飯は美味しいピヨ」
「そりゃ楽しみじゃわい」
みんなお腹が空いていたのか黙々と食べた。僕は初めてこの店に来たけど、フォレスト周辺で取れたキノコや果物を使った料理は、どれも美味しいかった。
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