[ 177 ] ハルトスコルピオン
グイーダさんのメルクーアレッタにより、ハルトスコルピオンはほぼ全滅。残った何匹かはみんなで対処することで、なんとか倒し切った。
「意外とあっけなかったですわね」
「いえ、ボスがいないなんてことは……」
フォレストですらボスカルミールベアが四匹出たんだ。この程度で済むわけがない……と思っていると、ゴゴゴゴゴゴオオという地響きの後、ギルドの側にある噴水が吹き飛んだ。
「な! デカすぎだろ!」
噴水を破壊したのは、地面から飛び出した巨大なサソリの尻尾。その尻尾だけで三メートルほどもあるだろうか。ブンブンと振り回すと、周りの家を破壊しつつ巨大な二つの鋏と共にボスハルトスコルピオンが姿を現した。
「ぎぇー! デカいピヨー!」
「ひいぃい、虫ぃいい!」
全長は十メートル近くある巨体。茶色いではなく黒光する装甲を纏ったボスハルトスコルピオン。まだこちらに気付いていない、チャンスは今しかない!
「レオラ! マスターを退避させて! ロゼとラッセさんはアイツの動きを止めて! グイーダさん!メルクーアレッタ!」
「「ナーデルフロワ・オルト!」」
ラッセとロゼから、無数の氷の針が次々にボスハルトスコルピオンに刺さり、足を体をどんどんと凍らせていく。
ナーデルフロワは範囲が広く即効性が高いが、持続や強度が無い。持って数秒だろうが、数秒あれば十分!
「メルクーアレッタ・オルト・ヴェルト!!」
グイーダの放った無数のレーザーが、ボスハルトスコルピオンを完璧に捕えた。
メルクーアレッタは、ヴェルト化させると命中率が極端に落ちるとルーエも言っていたが、標的がこれだけ大きければ余裕で当たる。
「ギュアァアアアアア!!」
全身凍結されたところに無数の水のレーザー攻撃、ボスハルトスコルピオンに纏っていた氷が砕けて、ぶわっと白煙が上がった。
「うぅ……ぅぐ」
白煙が立ち込める中、グイーダが魔力切れで倒れた。やはり練度★6になったばかりで、ヴェルトの連発は負担が大きすぎたか。
「グイーダさん! 大丈夫ですか?!」
「だ、大丈夫……しばらく横になってれば……ぅ」
「ごめんなさい、僕が無茶な指示したばかりに……」
「いいえ、私でも同じ選択をしていたと思……?! っがはっ!」
突然、白煙の中から振られた巨大な鋏が、グイーダさんを弾き飛ばした。
「グイーダさん!」
「ロイエ! 下がれ!」
マスターの声で、咄嗟にボスハルトスコルピオンから距離を取ると、僕のいた場所に巨大な鋏が振り下ろされた。
「くっ!」
「ロイエさん!」
「大丈夫です! レオラ! グイーダさんの保護を!」
振り下ろされた鋏の風圧で白煙が晴れると、ほぼ無傷のボスハルトスコルピオンが現れた。
「そんな……。無傷?!」
いくらなんでも硬すぎる! 随一の貫通力を誇るメルクーアレッタが効かないなんて……。
「ロゼ!!」
次の瞬間、ボスハルトスコルピオンの尻尾が、頭上からロゼに向かって振り下ろされようとしていた。
僕の重力魔法は近距離系だ、この距離からあの尻尾を軽くする事は出来ない。
それに物理法則もある、あれだけの巨大な物体を軽くしたところでその勢いは止まらないだろう。どうする!?
「鳥ぃいー! 行くぞぉおおー!」
「ピヨだよー! フリューネル!」
「リーゼファウスアルム・オルト!」
ピヨを肩に乗せたマスターがフリューネルで加速するとロゼと尻尾の間に滑り込んで、地面から出現させた巨大な岩の腕で尻尾を受け止めた。
「ぐぁああああ! なんて力だ!」
「がんばって押し返すピヨ!」
「ロイエ! 私がやってみる! ジオグランツ!」
マスターの受け止めた尻尾を、駆け寄ってきたレオラが遠距離ジオグランツで軽くしたが……。
「ぐぅう! ダメだ! 重力効いてねぇぞ!」
やはりあの装甲は重力が効きにくいらしい。しかし重力を軽くしたところで、レオラのジオグランツの範囲は二メートル程度、あの巨大全てを包み込むのは不可能だ。
おまけに軽くしたとしても、尻尾と繋がる筋力が衰えたわけではない。岩の腕と組み合ってる状態では重力魔法はほとんど効果がないだろう。
どうすればいい……。どうすれば倒せる?!
メルクーアレッタも効かないし、グイーダは再起不能だ。
ロゼもラッセも、もう魔力に余裕はないはずだし、氷も重力は効かない……。鋏で潰されたら回復で治せないかもしれない。
どうやってこんな化け物を倒せば……。
「あ! 左鋏が落ちてくるピヨー!」
尻尾の攻撃を受け止めているマスターに向けて、ボスハルトスコルピオンの左鋏が横凪に払ってきた。
「左?! なんだとぉお!! むりだー!」
考えろ! 考えろ!
みんなを救いたい! 絶対諦めるな!
硬い殻、重力魔法……それしかない!
「ロゼ! なんとか左鋏を受け止めて!」
「は、はい! アイゼンヴァント・オルト!」
ロゼが呼び出した氷の蛇が、迫り来る左鋏へ巻きついて動きを止めた。だが、長くは持たないだろう。
そうこうしているうちに、今度は右鋏の攻撃が迫っていた。
「させません。アイゼンヴァント・オルト!」
「ラッセさん!」
「うぐ……ロイエさん! 私も、もう魔力が切れます! 何か作戦があるんですよね!? 早く!」
ラッセの呼び出した氷の蛇がボスハルトスコルピオンの右鋏へ巻きつく。これで、右鋏、左鋏、尻尾は封じた! チャンスは今しかない!
「レオラ! ピヨ! こないだのやるよ!」
それだけで二人はわかってくれた。
「「ジオグランツ・ツヴァイ・ジオフォルテ!」」
「フリューネル!」
三つの魔法が完璧なタイミングで発動した。
僕は練度上げの特訓の時のように、超高速で空に向かった飛び上がった。
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