[ 176 ] モンスター到来
岩の腕に握り潰されたポルトは、気絶してぐったりとしている。
「ハァハァ……だめだ。体調がまだ戻ってねぇな。練度の高い魔法はしんどいぜ」
「マスターありがとうございます」
「おう。鳥は平気か?」
「はい、怪我は治しました」
「元気ピヨ!」
「ところで、お前本当にポルトの子供じゃねぇんだよな?」
「知らないピヨ、覚えてないもん」
ポルトさんはなんの根拠があって娘などと言っていたんだろうか。恐らくだが、誰かに入れ知恵をされたとしか思えないな……。誰か?それはシュテルンしかいないだろう。
ポルトの動機について考えていると、ガラガラとギルドの柱が崩壊して倒れた。度重なる魔法の連打で、ギルドの内部はさらにグチャグチャだ。
「はぁ、建て直ししねぇとな」
「ですね」
一安心したのも束の間、西側からグイーダさんの叫び声と共に小型犬くらいはある茶色いサソリが大量に押し寄せてきた。
「マスター! 助けてくださーい!」
「ハルトスコルピオンだ? まためんどくせぇ奴を……」
「知ってるんですか? 弱点はありますか?」
「ああ、西側の先の黒い砂漠に出るサソリだ。弱点は火だがそれと体がやたら硬い、剣で叩いたら剣が折れるほどだ。昔、一度戦っただけだが、土魔法を使った記憶があるな」
数としては十匹くらいだろうか。この程度ならなんとかなるな。そう思った矢先、南側からはラッセ、東側からはロゼとレオラがそれぞれハルトスコルピオンの群れを連れて走ってきた。
「ロイエー! こいつらジオグランツ効かないぃいい!」
「虫は苦手ですわー!」
「凍らせてもすぐに破壊されてしまって捕えられません!」
ジオグランツが効かない?! その上さらに土魔法を使うからドルックで氷の効かないのか。今の僕らの天敵みたいなモンスターだ。
「みんなこっちへ!」
重力も土も氷も効かないとなると、もうグイーダさんの水魔法に頼るしかない。
マスターを中心に集まりと、ラッセに指示を飛ばした。
「ラッセさん! 氷魔法練度★4の氷の蛇を召喚する……アイゼンヴァント?ってヴェルトで胴体を長くする事は出来ますか?!」
「え? ええ、出来るけど……」
「ハルトスコルピオンを食べてください!」
「なるほど……わかったわ! アイゼンヴァント・オルト・ヴェルト!」
ラッセが呼び出した氷魔法練度★5の氷の蛇。範囲化を可能にするヴェルトの効果で通常のものより長い。
氷の蛇は、ハルトスコルピオンを次々と飲み込んで、その硬い氷の体に収めていく。
「ロイエさん、どんどん中から破壊されてます。長くは持ちません」
「そのまま迂回して口を僕らに向けるように氷の蛇を一直線にしてください!」
周りにいたほとんどのハルトスコルピオンを飲み込むと、バキバキと内から破壊されている氷の蛇は、僕らに向けてその口の中を開いた。
「グイーダさん! いまです! メルクーアレッタを!」
「わわ、わたし?! ええい! メルクーアレッタ・オルト!」
水魔法練度★5のメルクーアレッタは単発の水レーザー魔法だが、オルトで強化されたその光線は、硬い体を持つハルトスコルピオンを一気に貫いた。
ギシャァアアアア!
ギュアァアアアアア!
「や、やった! 当たった! ……あれ?」
一発程度では先頭の数匹しか倒せてなかったが、それでも確実に倒せている。問題は氷の蛇の強度……後、数発ならと思っていた僕の予想を超えて、一瞬で氷の蛇が粉々に砕かれた。
「ラッセさん! もう一度!」
「そんなすぐには出せません!」
「アイゼンヴァント・オルト!」
ロゼが間一髪、氷の蛇を召喚してハルトスコルピオンを飲み込んだ。
「私の魔法ではラッセさんほど持ちません!」
強度は同じくらいだが、蛇自体のサイズが全く違うロゼの魔法は、一瞬の防御にしか役を果たさなかった。
「ああ、砕けます!」
時間にして数十秒しか稼げなかったが、それでもグイーダさんにとっては十分だった。
「練度が上がりました! あとは私に任せてださい!」
そういうと、グイーダさんが一歩前に出た。
「メルクーアレッタ・オルト・ヴェルト!」
十発ほどの水のレーザーが、集まっていたハルトスコルピオンの群れを貫いた。
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