[ 148 ] 商売上手

 火口か……。ファブロさんを助ける時にヘーレ洞窟へ行ったけど、あの暑さを防ぐには氷魔法使いの練度★2シェンバウムが必須だった。


 ミルトがいれば風魔法で山頂まで飛んで行ったり、暑さも無効化出来るのに……。


「火口って具体的にはどこら辺ですか?」

「それが父の遺品の中に地図がありまして……」


 そう言いながらミネラさんは、作業台の引き出しからボロボロに焦げた紙を取り出して広げた。


「これがこの街で、街の東側を抜けた先の沼地。それをさらに東へ向かい、山裾に沿ってぐるっと山を登り、この火口にバスターと記載が」


 確かに走り書きだが書いてある。ヘーレ洞窟は侵入が禁止されているから火口へ探しに行ったのか……。


「採取の個数や日数などの、具体的な依頼内容を聞いても良いでしょうか?」

「そうですね。このリュックに満タンくらいは欲しいです。日数は一週間くらいでどうでしょうか?」


 無、無理だ……。これで金貨八枚? 火口まで行くだけでも毒カエルのいる湿地帯を抜ける必要があるし、火口にもモンスターがいる可能性は高い。


 とてもじゃないけど、低ランクの僕らでクリア出来る依頼のレベルじゃないな。火口に幽霊がいるとか適当言って、ミアさんを連れて来れないかな……。無理だな。


「あの、ミネラさんこの依頼お断りさせて頂きたいです」

「え?」

「まず火口に行くだけでも相当危険ですし、金貨八枚じゃとても割に合わないです」

「それは……でもうちもあまりお金がなくて……」

「依頼をギルドが受理する際にある程度の審査があるはずですけど、同じ説明しました?」

「……いえ、このバスター鉱石は秘密裏に集めたかったので、そこは濁して依頼しました……」


 なるほど、依頼難易度の判定が適正じゃなかったんだな……。これは一度ギルドに持ち帰って適正ランクのアップと依頼料のアップが必要かな。


「いいじゃない。ロイエ、行きましょうよ」

「え? いやいや無理ですよ。火口ですよ? 氷魔法使いが最低一人はいないとあの暑さは死にますよ」

「あの! 私氷魔法使いです! 私がついて行けば可能ですか?」

「それだけじゃありません。湿地帯は今、デッドリーフロッグという毒カエルが住み着いているので、風魔法使いも必要です」

「風魔法ならピヨが使えるピヨ」

「?! ……と、鳥が喋っ……た?」


 あーもう。


「ピヨ。勝手に喋っちゃダメって言っただろ」

「でもピヨがいれば問題解決じゃないのピヨ?」

「それはそうだけど……そもそも金貨八枚が割にあってないし」

「ミネラ! あとひと推しピヨ!」

「わかりました! ……えっと! 採取したバスター鉱石でお二人の装備を無償で作りますので! それでなんとかなりませんか?!」


 魔法が強化される装備……ほ、欲しい。

 正直めちゃくちゃ欲しい……。


「魔法が強化される装備。世に出たら……そりゃうもう、金貨百枚は超える品になると思います!それが二つです!」

「くっ、さすが商売人……。商売上手ですね……」

「ロイエ行こうよ! 私も装備欲しい!」

「みんなでお出かけピヨ〜」


 くそ、ピヨの奴……。でも……。

 確かに装備二個で金貨百枚は超えるレベル……。


「も、もし途中に強いモンスターがいたら、速攻で引き返すと約束してくださいね」

「それでこそロイエ! よっ! 男だね!」

「ありがとうございます!」

「食べ物たくさん持って行くピヨ」

「ははは……」


 依頼外の報酬を貰ってるなんて、ギルドにバレたらヤバいな……。仲介手数料も本来なら跳ね上がるはずだから、横領と言われても言い逃れが厳しい……。


「小鳥さんもよろしくね?」

「任せるピヨ!」

「なんか仲良くなってるし……あの、レオラさん……このことはギルドには……」

「わかってるって、バレたらヤバいよね。ミネラも内緒ね」

「はい! わかりました!」


 うーん、勢いでオッケー出しちゃったけど、やはり少し心配だ。ただ今回の依頼の責任や決定権は、ランクEである僕にある。


「もう数時間で日も暮れるから、明日の早朝に出発でどうでしょうか?」

「そだね! 明日は港の仕事もないし」

「はい! 私、皆さんの食糧を用意しますね!」

「それは助かります」


 行くと決まれば話は早い。具体的な時間や頭頂の方法を相談して、書類にサインをするとその日は解散となった。

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