[ 142 ] 港の仕事

 翌朝、ギルドへ向かうとラッセが受付をしていた。


「おはようございます。鳥野郎」

「お、おはようございます。グイーダさんっていますか?」

「グイーダは今週、夕方からの勤務なのでまだ来ていません。寝坊助」

「そうですか……」


 困ったな、港に何時にいけばいいか聞いてなかった。


「あの、どうしてラッセさんはいつも語尾に一言付くんですか?」

「……あなたには関係ありません。お節介」


 なんかめちゃ睨まれてる。


「はは、ラッセさんはね。兄のアウスに変な虫が付かないおまじないとして、語尾に喧嘩文句付けろって言われてるんだよ」

「シュテルンさん、おはようございます」

「ああ、おはよう」


 ギルドの奥の部屋から、シュテルンがボサボサ頭のまま出てきた。ここに住んでるんだろうか。


「変な虫……。なるほど。ラッセさん可愛いですもんね」

「……っ!?」

「喧嘩文句なんかつけない方がいいよねぇ?」

「ええ、そうですね。無い方が良いと思いますよ」

「……そう、ですか?」

「ええ、普通に喋った方が可愛いですよ」

「……!!」


 あ、余計なこと言ったかも。


「あー、ロイエが口説いてるピヨ」

「え? いまのは誰の声?」


 しまった。ピヨの奴……。人前で喋るなって言っておいたのに……。


 (ごめんピヨー)


「ラ、ラッセさん可愛いピヨー」

「ロイエ、何してるのかな?」

「え、いや、鳥の声真似を……面白く無い……ですかね」

「うーん、五点。……ところで、その肩の鳥はどうしたの?」

「こ、これですか? なんか懐かれちゃって……はは」

「ベットを飼うなら、ちゃんと覚悟を持たないとダメだよ?」

「は、はい」


 シュテルンさんも、昔ペットを飼った事があるのかな? とりあえず話は逸らしておこう。


「あの、昨日港で仕事の応募をしたんですが、発表って何時くらいかわかりますか?」

「港の仕事?この時期に?」

「え? ええ、昨日港のポルトさん?という方とお話しして……」


 この時期? 時期が何か関係するのだろうか。


「うーん、そう言った話は聞いてないから、直接行った方がいいと思うよ」

「そうですか、わかりました」


 それだけ聞くと、ギルドを去ろうとしたらラッセさんに呼び止められた。


「ロイエさん、昨日の解決した依頼の報酬が来ております」

「あ、ありがとうございます!」

「はい、こちら金貨五枚となります」

「五枚……? あれ十枚のはずでは……」

「店長さんから、家を破壊した修繕費として金貨五枚が報酬から引かれております。心当たりがないですか?」


 あー。壊したの僕じゃ無いのに……。


「わかりました。大丈夫です」


 ラッセから金貨を受け取ると、シュテルンに挨拶し足早にギルドを後にした。


「港に行くピヨ?」

「うん、お金を貯めなきゃいけないんだ」

「大変ピヨね」


 ピヨに同情してもらいながら、君の生活費も含まれてるんだけどなと思いつつ、港へと向かった。


 今日は入船が無いようで、昨日よりも閑散としていた。たた、港長のポルトさんを始め、港の男達は忙しそうに走り回っている。


「こんにちはー」

「おう! 来たか!」


 相変わらずのねじり鉢巻姿のポルトさんは、朝から汗びっしょりだ。一旦離れることをみんなに伝えると、ポルトさんと事務所へ向かった。


「お前さん、重力魔法が使えるんだってな?」

「ええ、まぁそれなりに」

「それなりって、練度★3もあるじゃねぇかよ! 採用だ!」

「ありがとうございます!」

「報酬は入船時に金貨十五枚だ!」

「……入船時?」

「ああ、重力魔法で荷物運びをして欲しいんだが、入船の時以外は出番があまりねぇんだわ」

「一ヶ月以内にある入船の数は……?」

「んー、そうだな。ちょっと待ってろ。いち、にい……」


 まさか普段は仕事がなく、スポットでの都度雇用なのか……。手持ちの金貨が五枚と銀貨銅貨が少し。後六十枚まで五十五枚必要だ。入船時十五枚なら、あと四回ないとダメだな。


「一ヶ月以内だと後、二船だな」

 

 二船か……。金貨三十枚。ナッシュでの事を考えると破格だけど、あと二十五枚ほど足りない。


「わかりました。入船日を教えて貰えれば、伺いますのでギルドへ連絡頂ければと」

「わかった! んじゃまたな!」


 緊張してたポルトさんとの会話は、ものの数分で終わってしまった。とりあえず次の入船日がわからないけど、それまでに稼げるだけ稼ぐしかない。


 ナッシュほど広い街ではないから、一度ギルドに戻って依頼の確認をしよう。昨日見た中だと、希少鉱石の採掘が割が良さそうだったな。


「またギルドに戻るピヨ?」

「うん。今日は仕事無いみたいだからね」

「お腹空いたピヨ。果物がいいピヨ」

「わ、わかったよ」


 ピヨに屋敷から出てもらうために、衣食住を提供すると約束してしまったが、早まったかもしれない……。

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