[ 123 ] 武器屋巡り
「ふぅー! 美味しかったぁ! またこよう!」
「そうだね」
ミルトが満面の笑みで砂焼肉の店を出ると、シュテルンが悩んだ顔で聞いてきた。
「うーん、どうしようかな。案内ってやった事ないから……そうだ。逆にどこか行きたいお店とかあるかい?」
「あ、それなら武器屋ってありますか?」
「武器屋? あるよ。この近くで良質の鉄が取れるからね。この街は世界一武器屋が多いと言っても過言ではないんだ」
自慢げなシュテルンに案内されて、街で一番高級な武器屋に案内された。なんと三階建の建物でてっぺんには巨大な金の剣が飾られている。
「すごい悪趣味ですね……」
「まぁ、ハハ。でも品物は一級品ばかりですよ」
一級品という響きに期待して店に入ると、高級店だけあって内装にもお金をかけているし、店員の質も高そうだ。
「ゴールドソードへようこそ。どのような武器をお探しですか?」
「あー、これと同じような武器は無いですか?」
騎士団から返してもらった宝剣カルネオールを取り出して見せた。もちろんポッキリ折れている。
「拝見いたします。ふむ……。正直申し上げますと、あまり良い剣ではありませんね」
「そう、ですか?」
「ええ、まず重すぎるのと折れているとはいえ、重心がずれております。持ち手も短くバランスもデザインもイマイチですね」
「ロイエの剣の悪口いうなー!」
「これは失礼しました。私はこのゴールドソードのオーナーを務めさせて頂いている。ヘンドラーと申します」
「オーナーさんだったのですね」
「はい。オーナーとして万を超える剣を見てきた心眼が当店のウリでして……。そうですね。最近のトレンドの中で一番の売れ筋のこちらの剣などは、いかがでしょうか?」
ヘンドラーさんに渡されたのは、店の中でも一番目立つところに飾られている長剣だ。確かに軽い、これだけの長さがありながら宝剣カルネオールの半分以下の軽さだ。
「持ち運びに優れているだけでなく、持ち手のデザインも当店のイメージである星の形になっておりまして、腰に挿して歩くだけで注目間違いなしです」
別に注目されないわけじゃないんだけど……。
「だいぶ剣の厚みが薄いみたいですが……」
「いま最新のトレンドは、軽さとデザインです。当店の剣は全て洗礼されたデザインが売りとなっております」
ここの剣は僕には合わないな……。軽さよりも丈夫な剣じゃないと、レールザッツの使った氷魔法練度★7のグラオペルリングは破れない。
「すみません、軽さよりも丈夫さな剣が欲しいので……」
「丈夫な剣なんて流行りませんよ? 重いだけで腕力がないと大した威力も出ませんよー?」
ダメだ。この店は僕には合わない。シュテルンさんもあまり剣には詳しくないみたいで、店を出でて五軒ほど武器屋を回ったけど、どこも似たり寄ったりで同じ卸売から仕入れているのか同じ剣を大量に置いている店もあったくらいだ。
「他に武器屋は無いんですか?」
「うーん、あと一軒だけあるにはあるけど……」
「何か問題でも?」
「昔は人気だったんだけど、店主が変わってから駄作ばかり作ってて、変な色の剣ばかりだしデザインもダサいから誰も行かない店なら……」
変な色の剣? カルネオールもほんのり赤いため、どちらかというと変な色の部類だな。
「念の為行ってみましょう」
「こっちだよ。街の端っこにあるんだ」
案内されて着いた店は、店の上に剣のオブジェが乗っている。どこかでみたことがあるデザインだ。すごく馴染み深い……。なんだったかな。
「ごめんくださーい」
「誰もいないんじゃなーい?」
店の中に入ると、壺の中に無造作に剣が何本も突っ込まれている。どれも埃を被っていて長いこと誰の手にも取ってもらえていないことが伺える。
「ロイエ君、どこか似ていませんか?」
ルヴィドさんが一本の短刀を手に取ると、剣を引き抜いた。刃渡二十センチくらいの短刀は……、僕の持っている宝剣カルネオールにどことなく似ている気がする……。取り出して見比べてみても、雰囲気というかなんというか……。
「なんだテメェら! 泥棒か?!」
店の奥からボサボサ黒髪で、野生児みたいな男性が姿を現した。真っ黒なシャツ、泥だらけのズボンと接客をする装いではないが、どちらかというと職人というイメージだ。
「あ! そ、それ! おっさんの剣じゃねーか?!」
突然、おっさんの剣という、なんともカッコ悪い名前で呼ばれた宝剣カルネオールを、男性が指を指した。
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