[ 105 ] 強襲
真夜中……。それは起きた。
ゴゴゴォォォォオオオ!!
「ルヴィドさん! 地震だ!」
「ミルト! 起きてください!」
「なになに?!」
全員で飛び起きると、すぐに臨戦態勢を取る。ここまでの道のりで活性化したフィクスブルートは無かった。あるとしたらあのアインザーム火山の隣の山にあった村にある可能性が高い。
「まだここから結構ありますよね……」
闇夜の中、木々を避けて走るのは容易では無い。
「実は昨日、良い案を思いつきましたので、試してみましょうか」
ルヴィドの提案で、木々が多少開けた場所へ移動すると、お土産の近くに全員集まった。
「この状態で、ロイエ君も含めた範囲全てにジオグランツをかけて無重力にしてください。その後二人はお土産の上に乗ってくださいね」
「わかりました。ジオグランツ」
ふわっと体軽くなる。風でも吹いたら飛んでいってしまいそうな不安定な中、お土産の上にミルトと僕が乗ると、ルヴィドさんが二人ごとお土産を持ち上げて、ジャンプした。
「わわわ」
「ルヴィド力持ちみたいね!」
「ふふ」
ふわっと、三人+お土産は飛び上がり、ふわふわと上昇していく。
「そうか僕もいるから魔法を解除しない限り、有効範囲の四メートルを超えてもこのまま上昇しつづけるのか」
だんだんと高度があがり、七メートル近くある木々を超えると、真っ暗な森の中……。赤く燃えるアインザーム火山の方角、はるか遠くに赤く煌めくフィクスブルートがチラッと見えた。
「あれが村かな?」
「この距離からだと村かわかりませんが、あそこのフィクスブルートに星食いがいるのは間違いないです」
「やっぱり、結構距離ありますね……」
ヒョイっとお土産の下にいたルヴィドがお土産の上に登ると、まるで魔法の絨毯に乗ってるかのような状態になった。
「大丈夫です。二人ともお土産に捕まってください。ミルト、フリューネル!」
「なーるほど? ぶっ飛ばすわよ! フリューネル!」
ぐん!っとお土産が、まさに魔法の絨毯のように加速して飛行する。こんなコンボが可能だとは……。確かにジオグランツを覚えた頃、重力と風のダブルなら空が飛べそうだなと思ったけど……。
「ひゃっほー! これは気持ちいいわね! フリューネル!」
「この速度なら数分で着くでしょう。ロイエ君、どんなモンスターが出てるか、見えたら教えてください!」
「はい!」
十秒ごとのフリューネルでぐんぐん加速していく僕らは、フィクスブルートへと近づいて行く。
「ルヴィドさんあれ!」
指を刺した方角、フィクスブルートの周りを巨大な鳥のようものが複数、月明かりの下を羽ばたいているのが見えた。
「グリフォン……に見えますね。カルミールベアが火の魔法を使ったのと同様に、グリフォンは風の魔法を使います!」
「暗くてわかりにくいですが、少なくとも二十匹以上はいるように見えます!」
「ミルト! このまま高度を上げて上から奇襲しましょう! 私がクラウンクロイツで攻撃します」
そうか、遠距離系の雷属性を得意とするルヴィドさんがいればお土産に乗ったまま、攻撃が可能なのか……!
雷魔法練度★5のルヴィドさんは、魔法を範囲化させる練度★6のヴェルトの魔法が使えない。ゆえに練度★5の無数の雷の剣を飛ばすクラウンクロイツが、ルヴィドにとっては最大の呪文となる。
「よーし! 上昇させるよ! フリューネル!」
グリフォンに気付かれないように高度を上げ、フィクスブルートの上空まで来た。やはり村があるらしく、ここまで来ると村でも異変を察知したのか、焚き火が炊かれている。
眼下には巨大なグリフォンがおよそ二十匹以上。村を覆い隠すほどの量が舞っている。
「オルト付けると魔力的に余裕が無くなるのですが、この数相手だとオルト化させないと効果は薄そうですね……行きます!」
前置きを付けると、ルヴィドさんが眼下のグリフォン達へ向けて魔法を放つ。
「クラウンクロイツ・オルト!」
闇夜にバリバリと放電が走り、百を超える無数の剣が宙を舞う。オルトで強化されている分、カルミールベア戦で見た雷の剣よりも輝きの強い。
それぞれの剣が標的を定めると、二十以上いるグリフォン達へ次々と雷の剣が突き刺さった。
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