[ 104 ] 野宿二日目
「はぁはぁ……」
さすがに練習なしで山登りは辛いな。本当にこの道で合ってるのか心配になる。
「ロイエ君、ビンゴですよ。アインザーム火山の隣の山に村が見えますね。いったんあそこを目指しましょう」
「わかりました」
もうすでに日が落ち始めている。急いで山を降りて村を目指したが、道中で少し迷ってる間に日が完全に落ちてしまった。
「すみません。僕が迂回しようなんて言ったから……」
「まだ食料はあるので大丈夫ですよ。明日には着けると思います」
「ルヴィド。お腹空いたんだけど。夕飯まだ?」
お土産の上で寝て起きたら、ルヴィドさんの言う通りミルトの思考力が少しまともになった。もしかして戦闘中のセンスも、移植された誰か別の人格だったのかもしれないな……。
「仕方ありません。テントも持って来てませんし、ここで野宿ですね」
ルヴィド達は野宿に慣れているのか、自分たちの荷物から魔力ランタンを取り出したり、具無しのスープを作ったりと手際がよかった。
「いつも野宿していたんですか?」
「ええ、魔法研究所を抜けてからはお金ありませんでしたからね。食材を買うので精一杯でした。今回のカルミールベア討伐の報酬は久々の大金でした」
「僕もお金なかったので、村についたら何か買おうかな」
雑談をしながら野宿の準備をしていると、ミルトの特製具なしスープが出来上がった。匂いだけは良い。
「これはミルトが調味料も作ったの?」
「そうよ? 中身は聞かない方がいいわ」
「私も聞いてないので聞かない方が良いです」
「どれどれ……ズズ〜……ぅ」
「ロイエ君、わかってますね」
「……ぉぇ。は、はい……。おいしいなー!」
「でっしょー? 評判なのよー! ルヴィドしか飲んでくれないけど」
(ルヴィドさん……これ)
(うちのミルトが作ってくれた料理をむげにできないじゃないですか……)
(とんでもない味ですよ)
「なにこそこそ喋ってるの?」
「あ! いや、何でもない。隠し味は何かなーって話を……」
「ふっふー! それは秘密よ!」
一生聞きたくない……。下手にミルトの特性激まずスープを飲まなくても、今日の分の食料はある。ただ、日数通り使ってしまうと何かあった際に困るので、今日はルヴィドさんの食料を三等分して、足りない分はスープを作ることになったのだ。
「はぁ――何とか飲んだぞ……」
「ロイエ君、さすがです。私は飲み切るまでに一週間かかりました」
「それで褒められても全然嬉しくないです」
あれだけ寝たのにまだ眠いらしいミルトは、お土産の上が気に入ったのか、潰さないようにするからとジオグランツをミルトにかけて、お土産の上で寝始めた。
「器用だな……」
「ロイエ君、気になってたんですがその腰の刀はどこで手に入れたのですか?カルミールベアの時、リュカが使ってましたがとんでもない切れ味でしたね」
「ああ、これは……」
腰から宝剣カルネオールを取り出して、ルヴィドさんに渡してみた。
「ほぉ……これはすごい。この刃、カルネオール鉱石では?」
「わかるんですか?」
「ええ、研究所で使ったことがある素材です。とにかく切れ味が鋭い素材ですが、強度は高くないので甲殻類系のモンスターには使わないことをお勧めします」
「そうなんですね。聞いておいてよかったです」
「思い出しました。それとカルネオールには魔法を貯める性質がありまして、一度製品化のためにこの鉱石を使ったんですが、上手く加工出来なかったんですよね。ちょっと試してみてもいいですか?」
ルヴィドさんが宝剣カルネオールを持つと、雷魔法練度★1のグレンツェンを唱え出した。
「見てください。刀が放電しているのが見えますか?」
「……はい、まさかこれで切り付けると?」
「やってみてください。石はダメですよ。柔らかいものにしてください」
焚き火で見える範囲に、大ぶりのキノコを見つけたので刃を立ててみる……。
ビリビリッ! ジュッ!
「キノコが感電して焦げました……」
「素晴らしい。やはりこのくらいの大きさのカルネオールじゃないとダメだったんですね……。蓄積させても一撃しか使えませんし、長時間は蓄積させられませんが、いざという時のために練習しておくと良いかもしれませんね」
「そうですね。覚えておきます」
宝剣カルネオールにこんな力が……。ミルトがいれば、五属性どれでもチャージ出来るのでは? 今度ためさせてもらおう。
こうして、僕たちは二日目の野宿を終えた。
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