[ 106 ] グリフォン戦

 ルヴィドさんの放った百本を超える雷の剣だが、二十匹を超えるグリフォンが相手となると、一匹に対して六〜七本程度しか飛んでない。当たりどころの悪かった数匹は撃墜したが、大半はあまりダメージが無いように見受けられる。


「やはりヴェルトが無いと、この数は厳しいですね……うぷ」


 文字通り最大の魔法だったのだろう。ルヴィドには早速魔力枯渇の症状が現れてる。


「ミルト! ルヴィドさんなしで空中戦は無理だ! 一旦地上に降りよう!」

「わかった! 牽制しながら降りるよ! グレンツェン! グリーゼル! ヴェルア! フリューネル!」


 魔法をばら撒きながら、空飛ぶお土産を加速させ、フィクスブルートの近くに降り立つ。モンスターがフィクスブルートから現れた物なら、フィクスブルートを攻撃するようなことは避けるはずという目算での着陸だ。


「おい! さっきのお前らか?!」


 降り立つと、すぐに銀色の鎧を身につけた騎士が駆けつけてきた。


「な、王国騎士団……?!」


 こいつがフィクスブルートから魔力を?!

 ルヴィドさんは魔力枯渇で動けない! ミルトもここまで何度もフリューネルを使ったため万全では無い。


「僕がやる! ミルト! ルヴィドさんをフォローを頼む!」


 腰の宝剣カルネオールを抜くと、近寄って来た銀色の騎士に斬りかかった。


「ジオグランツ!」


 僕がルーエさんレベルの星食いを倒すには、先手必勝しかない!


「待て待て! 待ってくれええええええーー!」


 銀色の騎士は、斬りかかる僕を前に武器を捨て、ジオグランツに逆らうことをせず地面へへばりついた。


「ぐへっ! お、俺は怪しい者じゃない! 王国騎士団の調査班! ファレンと申します!」


 振り下ろしていた剣を慌てて止めると、勢い余って僕も転がった。


「くっ。なぜここに王国騎士団がいるんですか!」


 ジオグランツを弱めずに、そのまま剣を構えて銀色の騎士ファレンに問いただす。上空では態勢を立て直したグリフォンが次々と村へ降りて来た。


「さ、最近フィクスブルートの周辺にモンスターが大量発生する事案が報告されていると言われて、このバルカン村の警護にあたってました!」


 まただ……。ルント湖付近の森で出会った騎士、市長アルノマールが語った真面目な騎士団、そしてこの騎士。どれも同じような信念をもとに動いているように思う……。

 

「騎士団はあなた一人ですか?!」

「王国騎士団の監査官ゾルダート様と一緒ですが、騒ぎの少し前から所在不明でして!」


 ならそっちか! 星食いは! ファレンに構っている場合じゃ無い!


「わかりました! 僕らは通りすがりの冒険者のパーティです! グリフォン討伐にご協力ください!」

「わ、わかりました!」


 ジオグランツを解くと、ファレンは両手を上げたまま立ち上がった。


「何か誤解を与えてしまったら申し訳ない。ご協力感謝します!」

「冒険者のロイエです。村人の避難はどうなっていますか?」

「現在、災害対策用の高台の小屋に避難しております!」

「わかりました! とりあえず一匹ずつ仕留めましょう!」

「じ、実は俺では一匹も倒せなくて……」


 それは僕も似たような者だ。どうする……。幸いボスモンスターはいないようなので、確実に一匹ずつ倒していくしか無い……。


「ロイエ君、グリフォンは魔法耐性が異様に高いようです。私のクラウンクロイツでもほとんどダメージはな 無いみたいですね。……申し訳ない」

「いえ、なら剣で倒すしかないですね……」


 どうする……。ミルトと一緒に軽くなってフリューネルで飛んで倒すか? 空中を自由に駆け巡るグリフォンに直線的な攻撃は、簡単に避けられる可能性が高い……。


「降りて来たところを、ジオグランツで捕らえて叩きます! ファレンさんも援護をお願いします!」

「わかりました! ヘルブランランツェ!」


 ファレンさんは遠距離系の火属性か。ファレンさんのやや広がったような青い炎の槍が、空を赤く染めた。


「よ、よし落ちて来ました!」

「任せてください! ジオグランツ!」


「グェエエ! グェエエ!」

「たぁ!」

「グェェエエエ!!」


 やはり宝剣カルネオール。凄まじい切れ味だ。落ちて来たグリフォンの羽を切り裂くと、その勢いのまま首を跳ね飛ばした。


「よし! 一匹! 次もお願いします!」

「あわわ……」


 見上げるとグリフォン達は、上空でホバリングをはじめ、一斉にフリューネルによる遠距離攻撃してきた。


「痛っ!」


 飛ばされたフリューネルが掠ったところがパックリと切れた。なんて威力だ……。今まで出会った風魔法使いは全員近距離系だったため、フリューネルは自身を加速させるための魔法だと思っていたが、遠距離攻撃のフリューネルはまさにカマイタチの如く危険な魔法だった。


「まずい……! ミルト! ザントシルドだ!」

「はーい! ザントシルド!」

「俺も入れてくれっ」


 地面から突き出した土の盾が、グリフォンのフリューネルを防ぐ。だか言動からするに、ミルトの知能指数が下がって来てる。無理が出てる証拠だ。グリフォンの猛攻でザントシルドもそう長くは持たない……。どうすれば……。


「おいおい、なんか様子が変だと思ったら……。誰だテメェら」


アインザーム火山の方、村の後方から銀色の鎧を纏った騎士が現れた。

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