[ 102 ] 強さが欲しい

「星食い達が……王国騎士団?」

「市長も気付いてるはずです。なのでルーエさんを王国騎士団への引き渡しではなく、王国騎士団と対立しているヘクセライへの密送を選んだのだと思います」


 この国……リッターガルドの王は、国の秩序安定化のために王国騎士団を作った。その騎士団が実は裏で星の魔力を食い、永遠の命を求めている……。


「騎士団に疑念を抱いたのは私の生まれた村が、モンスターに襲われた時です。通常王国騎士団というのは国を常に移動していて、各地の街を回っているのですが、速すぎるのです。私の村がモンスターに襲われてから王国騎士団が来るまでが……」

「あらかじめモンスターが出ると知っていなければ対応出来ない速さ……という事ですね」

「そうです。しかも村人が全員死んでからモンスターの駆除を行う事で、証拠も消しています」


 村人が生きていれば、騎士団か誰かがフィクスブルートに近寄っていたなどの目撃証言が上がるかもしれないから……か。


「整理してみましょうか。まず国が騎士団を使い星食いと名乗りながら星の魔力を吸っている。目的は永遠の命を手に入れるため。そして、魔力を吸われると星は反撃として、モンスターを生み出す。そのモンスターを騎士団が討伐し、功績を得る」

「それは恐らくあっている気がします。でもそれと回復術師が減った理由が結び付きません」

「こういう場合は仮説を立ててみましょうか。星の魔力だけでは永遠の命を手に入れられない」


 ……! 永遠の命だ。命を回復する回復魔法が何かしら関係している可能性はある……。


「となると、五百年前から回復術師が減ったという話は……。星食い達が、永遠の命を得るために回復術師を集めて実験に使い減った可能性がありますね」


 なんて事だ……。それなら国が回復術師を保護するという正義を掲げた上で、堂々と実験材料を確保できる……。


「そもそもおかしいですよね。十五歳を超えて回復魔法が解放された人は、国に保護してもらうか選べるはずなのに、僕は回復術師と会った事がありません」

「そうです。申請したら最後誘拐されてる可能性があります」


 そうなると、十五歳まで重力使いの元で修行して、大手を振るって街を歩けるようにするという目的が怪しくなってくる。


「普通の回復術師なら、国に申請して保護を拒否したとしても、星食い達に誘拐されるでしょう。ただロイエ君は重力魔法が使えます。鍛えて練度★6程度の魔法使いを楽に倒せるようになれば、誘拐される心配も減るでしょう」

「そしたら、困ってる人を堂々と助けられますね……」

「そうです。その為には信頼できる仲間をたくさん集めましょう」


 やはりこの世界で生きていくには、強さが必要だ。強さと仲間……。これさえあれば星食い達を止められるかもしれない。


「今はまだ私たちは弱い……。ルーエさん以上の魔法使いが現れたら終わりです。私とミルトは殺され、ロイエ君は実験材料にされるでしょう。いまは強さが必要です」

「はい、一刻も早く彼に会いましょう……」


 ルヴィドさんと話す事で、いくつかの謎が解けて来た。しかし、まだわからないこともたくさんある。


 例えば、僕が森で出会った黒髪の騎士は、ルーエさんとは違ってまともな人というか……。どちらかと言うと、ルヴィドさん寄りのオーラを感じた。単純に王国騎士団=星食いではない気がする。


 わからない事や心配な事もたくさんあるけど、いまは前に進むしか無い……。そう思いながら眠りに落ちた。

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