[ 101 ] ルヴィドの過去

 横になり二人でテントのてっぺんを眺めながら、ルヴィドが語ってくれた。


「私とリュカは幼馴染でして、一緒に魔法研究所に就職しました」

「そうだったんですね」

「魔法研究所では、この魔法という力がどこからくるのか、どのような活用法があるのか、日夜研究する機関でして、この魔力ランプも魔法研究所で考案された物です。研究所は生産と販売には興味が無いため、すぐに民間に権利を売り払いましたけどね」


 魔力を流すと一定時間火が灯る魔力ランプは、採掘所で重宝されていた。人々の暮らしを豊かにする企業だったのか。


「ただ、ある日。私とリュカの同郷である村がモンスターの群れに襲われたと連絡がありました。冒険者を雇って駆けつけましたが、時はすでに遅く村は壊滅状態」

「やはり星食い達が……」

「ええ、恐らく……。何度もモンスターを呼んだためかフィクスブルートも非活性化されており、あたりはモンスターで溢れかえっておりました」


 今回フォレストのフィクスブルートはギルドの地下に埋まっていたため、人目があるせいか連続ではなく、間隔を開けて何度も魔力を吸収されたという事か。


「王国騎士団もたまたま近くにいて、すぐにモンスターは討伐されましたが、助かった村人はいませんでした」

「ルヴィドさんやリュカさんも家族も……」

「ええ、骨すら残っていませんでした。それからです。私がフィクスブルートや周囲の魔素測定に興味を抱いて、もしかしてフィクスブルートからモンスターが出たのでは?と仮説を立てて調査に乗り出しました」


 実際には星食い達が魔吸石を使い、フィクスブルート経由で星から魔力を吸っていたと。


「ある日、まだ活性化しているフィクスブルートを森の中で見つけて調査していると、怪しい黒服の男達がフィクスブルートの近くで怪しい動きをしており、静かに見守っていると地震の発生、そしてモンスターの発生……」


 奴らだ……。どれくらいの規模なのかわからないがルーエ以外にもいるのは確実という事だ。


「私は彼らの後をつけました。すると洞窟の中に入っていくじゃないですか。当時高額の盗賊団討伐依頼が出てると冒険者の中で話題になっていたので、ここが盗賊団の秘密基地だと思い、近くでまた奴らが洞窟を出るタイミングを見張っていました」


 父さんが討伐依頼を出した時か……。となると二〜三年前かな。


「辛抱強く待つと奴らで出て行ったので、その隙に急いで中を偵察しました。すると何かの研究施設になっており、研究者としては大変興味がありましたが、グッと堪えて誰か捕まっていないか調べると、鎖に繋がれた女の子を見つけました」

「それがミルト……」

「そうです。本来助けたりすれば誰かがここに入った事がバレるので、王国騎士団に連絡してから再度突入すべきでしたが……」


 星食い達はルーエのように全員が練度★6程度の使い手だとしたら、ルヴィドさんでは勝てない……。


「長居も無用なので脱出しようとした時、ミルトが目を覚ましてしまい。目が合うと「この子を助けてください」と言ったんです。私は意味がわかりませんでした」

「この子を……? 何な変な言葉ですね」

「ええ、そこにはミルト一人しかいないのにです。その声に導かれるように私はミルトに繋がっていた鎖を外すと、彼女を抱えて逃げ出していました」


 聞いているだけで、星食い達に見つからないかハラハラしてくる。しかし、この子を……どういう意味だろ……。


「後日、ミルトに何をされたのかなど聞くうちに確信しました。あれは、ミルトに脳移植されたミルトの母親の声だったんだと思います」


 ……!


 ミルトの脳に移植された五つの脳に……ミルトの母親の脳が……? そんな残酷なことあるのか、あっていいのか……。死してもなお我が子を守りたいという母親の意思が、ミルトを救ったのか……。


「それからはミルトの身柄をどうすれば良いのか、奴らが取り返しに来たらどうするか考えて、何も言わずに魔法研究所を辞めました」

「ルヴィドさんとミルトは封印教団を名乗り、各地で活動をしていたと……でも、星食いの奴らにミルトが見つかってしまう危険性があったのでは?」

「それは恐らく大丈夫でしょう。ミルトを助けた後、洞窟に爆薬をしかけて奴らが戻ってきたタイミングで、粉々に吹き飛ばしました」


 やる事が大胆だ……! 証拠を絶対残さないやり方といい、ルヴィドさんは絶対敵に回したく無い人だ。


「ただ、情報源が無くなってしまったので、こうして封印教団としてモンスター発生の原因や兆候などの情報を集めていました。おかげでいつも金欠です」


 ルヴィドさんとミルトには、特別な絆を感じると思ったら、そういう事だったのか……。


「あとはご存知の通り、フォレストで地震の後モンスターが出たという話を聞いて、一カ月ほど怪盗ノワールとしてミルトには活動してもらっていました」

「なるほど……今まであった出来事が繋がった気がします。でもルーエさんが魔吸石を使った時、なぜ僕は麻痺魔法を……?」

「ロイエ君が、事件に巻き込まれるのを避けるためにやりましたけど、恐らく練度★3のアノマリーという状態異常回復魔法が無詠唱で発動して解除したのでしょう」


 なるほど、確かにハリルベルはそれからしばらくしても麻痺が取れなかった……。アノマリーがどこまでの状態異常を回復させられるのか、一度検証が必要かもしれない。


「私とリュカの故郷の件。そして今回の事件や、ロイエ君の過去を聞いて、ああ……ロイエ君は私たちと同じ者と戦っていると感じました」

「同じ者?」


「私の推測ですが……

 星食い達の正体は、王国騎士団です」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る