[ 091 ] カルミールベア戦
カルミールベアは足が遅いのが弱点だ。僕の脚力から翻弄しながら倒せる可能性がある。正門には何頭か既に到着し街へと入ってきていた。
僕は先頭を行くカルミールベアの近くまで走り、重力で押し潰す。
「ジオグランツ!」
「グォフ?!」
範囲も重さも最大にしているが、熊の持つ筋力は伊達じゃ無い。少し猫背になった程度で変わらない速度で迫ってくる。
「ツヴァイ・ジオフォルテ!」
「グォオオォ……!」
重力の段差を使ったギロチンを繰り出すも、体を少し歪ませる程度で血を出しながらも、一歩一歩と歩を進めてくる。なんて体力と筋力だ……。軟体だったリーラヴァイパーとは強度がまるで違う!
「ゴォアアアアアァ!」
動きが鈍ってるうちに宝剣でトドメをと思って手にかけた瞬間、カルミールベアが火を吐いてきた。
「うわぁああ!」
慌てて退いたけど左手が焼かれた。慌ててクーアで癒すも、退いた事で重力圏から離れ魔法が解除され、カルミールベアが解放されてしまった。
「グルルルァァア!」
「くそっ! 」
学習したのか、カルミールベアはいつでもヴェルアを発動させる構えに入っている。まずい……。思ったより強いぞ。ルヴィドが厳しいかもしれないと言った意味が今頃になってわかった。
「ジオグランツ!」
魔法再発動まで、カルミールベアの攻撃を避け再度ジオグランツを発動させた。
なんてことだ。カルミールベアは強靭な肉体と知能、遠距離攻撃と今まで戦ったどのモンスターよりも格段に強い。
「ロイエ! 大丈夫か?! うおっと!」
右の方でハリルベルとリュカさんもカルミールベアに苦戦しているのが見えた。まず、風の拘束がカルミールベアに効いていない。アングリフで強化した攻撃も、ヴェルアに阻まれて有効打が入らない状態だ。
まだ一匹も倒せていないのに、後ろから追加のカルミールベアが続々向かってきているのが見える。
「ツヴァイ・ジオフォルテ!」
まずは目の前の一頭を倒さないことには始まらない! 先ほどは倒せなかったにしろダメージは与えられている。カルミールベアのヴェルアをギリギリの範囲で回避しつつ、重力ギロチンを執行しつづける。
チラッと視線を傾けると左側では、ガンツとルヴィドが戦っているのが見えた。ルヴィドが遠距離の雷魔法でカルミールベアを感電させて、その隙にガンツがフリューネルで高速移動して斧で一撃。ヒットアンドウェイ戦法で確実にダメージを与えている。こっちは大丈夫そうだ。
「ゴオアアアアァァアア!」
カルミールベアが再度ヴェルアを吐こうと大きく息を吸った。ダメだ、明らかに一人では抑えるのが限界で、決定打に欠ける……。どうすれば!
「グリーゼル!」
どこからか飛んできた氷魔法で、ヴェルアを吐こうとしていたカルミールベアの頭部が凍った。
「ロゼさん?!」
駆けつけてくれたのかという嬉しさと、危険なところに出てきて欲しくなかった不安が入り混じる中、テンションの高い声が響き渡った。
「ハーハハハハ! 怪盗ノワール! ただいま参上!」
「ミルト?!」
現れたのは、黒のマントに白い仮面を被った怪盗ノワール。ロゼさんじゃなかったことに少し残念な気持ちになったが、いまはそれどころじゃない。
「助かった! 僕が抑えるからカルミールベアを攻撃して!」
「ちょ! ミルトじゃないし! ノワールだし!」
「早く!」
「あーもうわかったわよ! アングリフ! フリューネル!」
ミルトはアングリフで身体能力を強化すると、フリューネルでカルミールベアの頭上に飛び上がり上空で魔法を追加発動させた。
「グレンツェン!」
雷魔法練度★1のグレンツェンで雷を纏った剣が、顔の氷を叩いて取っていたカルミールベアを頭上から一刀両断した。
なんて強さだ……。いくらアングリフで強化してフリューネルによる落下速度をプラスしたとはいえ、女の子の筋力だ。カルミールベアを一刀両断するほどの力は無いはずだが……。
「……あ、僕の重力を重さとして利用したのか」
「正解! さ! サクサクいきましょう!」
なんて戦闘センスの持ち主だ……。
どういうわけか、ミルトは複数の魔法を同時に使える。アングリフによる身体強化。グレンツェンによる雷撃剣、フリューネルによる高速攻撃に加え、ジオグランツとジオフォルテによる重力加速。これだけ加わればカルミールベアも一撃で倒せるのは頷ける。
「ミルト! 僕がカルミールベアを抑えるから攻撃は任せた!」
「ふつー、女の子と男の子的には、役割逆じゃなーい?」
僕とミルトは、続々と正門から溢れ出すカルミールベアの群れへと走り出した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます