[ 083 ] 樹上での戦い

 警報の後、風魔法を使ったアナウンスが流れた。


『緊急事態発生! こちら市長のアノルマーレ! 現在フォレストにシルバービーの群れが向かってる! 直ちに建物の中に避難しろ! 繰り返す……』


 シルバービー? モンスターの群れだ! ミルトがいうような前兆地震はあったか? 樹上の街アストでは常に揺れてるせいか全くわからなかった。


「ロイエさん! わたくしたちも戦闘に参加しましょう!」

「僕とハリルベルで応戦します! ロゼさんとリュカさんは避難誘導を!」


 そう言いながら駆け出したが、ハリルベルがついてこず振り返ると、ハリルベルは頭を抱えていた。


「どうしたの? ……あ」

「剣、預けてきちゃった……」


 近距離系のハリルベルは、剣がなければさらに射程が狭い……。相手次第では役立たずになりそうだ。といっても僕も四メートルしか無理だけど……。


「とりあえずいこう! 何か出来ることがあるはずだ!」

「わ、わかった!」


 二人を残して市役所を飛び出すと、銀色の体を持つ巨大な蜂が八十体ほど街の空を埋めていた。


「なんて数……」

「名前がシルバービーって聞いた時から、嫌な予感はしてたんだよなぁ」


 相手が飛んでるのであれば、文字通り役立たずなハリルベルは、壁の影から降りてきた蜂だけを狙おうと物陰に隠れている。


「ロイエ! 後ろ!」


「くっ! ジオグランツ!」


 最大四メートルまで広げた球状の重力圏を展開し、近づいてきたシルバービーの撃墜させた。


 まずい……今まで戦ったリンドブルムは一体。リーラヴァイパーは二体いたけど、一匹はクルトさんやハリルベルが抑えててくれた。


 ジオグランツの範囲外からシルバービーの攻撃がくれば、ジオフォルテとの同時はできるがそれで終わりだ。これだけの数の敵と同時に戦うことは出来ない。


「えいっ!!」


 宝剣カルネオールで、自分の身長ほどもあるシルバービーの羽を斬りつけて破壊して、すぐにジオグランツを解除。なるべく短いスパンで切って、いつでも発動出来る状態にしておく必要がある。


「トドメは俺に任せろ! もう一匹来るぞ!」


 ハリルベルは駆けつけると、羽を切り裂いたシルバービーにヴェルアで攻撃を加えていく。


「ジオグランツ!」


 死角から突撃してきたシルバービーを捕えると、羽を破壊してトドメはハリルベルに任せる。意外と良い戦法かもしれない。


「ロイエ! 上だ!」


「ツヴァイ・ジオフォルテ!」


 範囲外半分しかないジオフォルテでは、ギリギリまで引きつけないと効果範囲に入らない。僕が二匹の蜂を押さえ込んで羽を切り落とすと、ハリルベルがすぐにヴェルアで焼いていく。


「いけそうだな!」

「うん! ただ……」


 シルバービーが、僕らを敵と認識したのか、十匹ほどが四方八方から同時攻撃してきた。


「まずい!」

「任せろ! ヘルブランランツェ!」


 ハリルベルが青い槍状の炎を呼び出し上空を焦がすが、ヘルブランランツェは火力が高いものの攻撃範囲が狭く、空を自由に駆けるシルバービーには、効果が薄かった。


「ぉえ……うぷ」

「ハリルベル?! 魔力切れか!」


 まだ練度★四になりたてのハリルベルでは魔力が足りない。顔色の悪いハリルベルに肩を貸して市役所へ逃げこもうとした時、背後から無数のシルバービーが僕らを目掛けて攻撃してきた。


「ハーハハハハ! 師匠直伝の魔法を喰らういい!」


 どこからともなく声がブリュレの声が響くと、空気がピリピリと帯電し……。


「アダサーベン!」


 瞬間、雷鳴と稲光を携え、雷の手裏剣がシルバービーの間を如く駆け巡り、次々と感電させていく。


「すごい……」


「うぇ……気持ち悪ぅ。じゃなかった……くっ! てこずらせやがおえー」


 カッコよく駆けつけたブリュレは、バタリとカッコ悪く倒れた。

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