[ 074 ] フォレストを目指して

「ところで、トロイさんはどうやってあんなにスライムを集めたんですか?」


 ガタゴトと揺れる馬車の中、せっかくのご縁なので、色々とトロイさんに質問してみた。これから向かうフォレストの情報も出来れば欲しい。


「自分は、穴を掘るのが大好きでして……フォレストでは役立たずと言われるっす。ハイネル村から洞窟のスライム討伐依頼が来て、穴掘りならお前だろって行かされたっす……」

「それで、どうしてあんな事に……」

「最初はスライムに対してドルックをかけたっすよ。でもぷるぷるしてて効かなくて、穴を掘って一箇所に集めて餓死させようと思ったっす」


 なるほど、それで鼠返し付きのプールみたいな形に……。倒す方法がわからなくて、餓死を狙ってたら自分の周りの土まで破壊したのか……。


「いやー、ロイエさん達が来てくれなかったら自分が餓死してたっす。たはは」

「穴を掘るのが得意なら足場にトンネルを作って、地中から堀の外へ出ればよかったのでは……」


 なんだって?!って口を開けて、驚いてるトロイさん。そもそも足場を壊さなければ、そのまま逃げれたのに……。


「流石っす。自分まだまだっすね……」

「いやドルックって練度★二の魔法をあれだけ掘れるほど連続で使えるのはすごいですよ」

「いやー、それしか出来ないっすもん」


 なんだかんだ話してみるとトロイさんは、すごく気が優しくて良い人だった。普段はフォレストにいるらしいので、みんなこんな感じの人ばかりなら、少し安心だ。


「ちなみにフォレストって、どんな街なんですか?」

「どんなと言われても難しいっすけど、木があります!」

「ぉおぅ」


 まぁ深緑都市というくらいだろうから? 木はあると思うよ?


「どんな木ですか?」

「めちゃくちゃデカいんすよー!」


 ダメだ全然わからん……。


「ふふ、ロイエさんも見たらわかると思いますよ」

「ロゼさんは行った事あるの?」

「ええ、貿易品の納品や交渉で何度か。市長やギルドマスターにも何度かお会いしましたわ」

「どんな方ですか?」

「そうですわね。言葉で説明するのが難しいので、会ってみてのお楽しみということで」


 逆に怖いパターンだなこれは……。


 まずフォレストについてたら、やらなきゃいけない事がある。ひとつギルドへの依頼達成報告。今回はフリーレン商会からの護衛依頼としてフォレストへ向かっている手前、完了の報告をしなきゃいけない。


 ハイネル村の特産キノコの納品もあるし、一度ギルドには顔を出すのは必須だ。


 次に市長への挨拶。馬車の中でロゼから聞いたんだけど、フォレストの市長はマスターの元恋人らしい。何歳なんだろ……。


 僕がナッシュに来た頃、マスターは「フォレストに回復術師が現れたと偽の情報を流した」と言っていた。つまりフォレストのマスターや市長も一枚噛んでる可能性がある。僕のせいで危険な橋を渡っているのなら、顔を出すのが筋だろう……。


「俺はフォレストの鍛冶屋に行きたいな。ナッシュの鉱石とフォレストの灰を使った鍛冶屋があるらしい」

「わたくしは貿易品の納品で、ギルベルタ商会に顔を出す予定ですわ」


 ギルベルタ商会というのは、フォレストを中心に活動している企業らしい。フリーレン商会との繋がりがあるとか。


「私は、ヘクセライ魔法研究所の職員がいるので、会う予定です」


 トロイがいるから、馬車の中で回復術師に関する話題は出せない。それに関する話題もNGだ。


 当たり障りない話で仲間との意思疎通を計っていると、馬車は順調に深緑都市フォレストへと近づいた。

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