[ 075 ] 深緑都市フォレストー入口ー

 トロイさんの言ってる意味がわかった。デカい木だ。めっちゃくちゃデカい木……。


 深緑都市フォレストは、山のような信じられないほどの巨木の根元に作られた都市だった。


「な、何メートルあるんですか、これ……」

「約二百五十メートルですわ」


 東京タワーが三百三十三メートルだからそれより小さいけど、それでもこの世界においては世界最大だと言っても過言では無さそうな大きさだ。


「木の上にも、少し街がありますね」

「ええ。大昔は木の上の街だけだったみたいです。モンスターが大量発生して逃げるために木の上に先祖が街を作ったのが始まりとか、諸説あるみたいですわ」

「木の根元の街が後から出来たということか……」

「ええ、人口増加で住む場所が足りなくなり、木の根元の街は拡大を続けています」


 木の根元にはナッシュほどの広さの街があり、木の上にはその半分以下の小さな町になっている。これが深緑都市フォレストの全体像か。


「それにしても、結構早く着きましたね?」

「はい。私がフリューネルで、後ろから馬車を押してましたから」


 どうりで馬が息切れしてるわけだ……。本来は馬で三日の距離。ナッシュからハイネル村まで半日。ハイネル村からフォレストまでは二日半ほどかかるはずだが、実際ハイネル村から一日半で辿り着いた。


「あれから王国騎士団にも会わなかったですね」

「もうとっくにナッシュへ着いている頃でしょう。この時間差を利用して、一刻も早くヘクセライへ向かわないといけませんね」


 この時、リュカさんと僕の感覚が少しずれていると感じた。おそらくリュカさんはフォレストなんて滞在する気がないのだろう。でも、僕は少しこの街に留まりたい。そう思う何かが、この街にはある気がする。


 そのまま、すんなりフォレストの門まで到達すると、門番からお決まりのセリフを頂いた。


「ここは深緑都市フォレストである。何用だ!」


 ロゼが馬車から降りて、ギルドの依頼書や身分証を出してあれこれ説明している。何度か来たことがあるらしいので、ここはロゼに任せよう。


「トロイさん、荷物を下ろした後はギルドへの案内をお願いしても良いでしょうか?」

「わかったっす! ドンと任せて欲しいっす! ちなみに市長は木上の街アストにいるっす。ギルドや鍛冶屋は地上の街ランツェルにありまっす」


 木の上にある街がアスト、地上の街はランツェル。ランツェルはアストの倍ほど大きく、基本的な町の機能としてはランツェルに集約されているようだ。


「宿屋はどこがおすすめですか?」

「宿なら見晴らし重視なら、アストにあるメルダーホテル。価格重視ならランツェルにあるグートの宿ですね」

「人数が多いからランツェルの宿にしようかな」

「らじゃっす! 案内しまっす」

「じゃ荷物を下ろしたら宿を手配。そのあと特産キノコを持ってロゼとハリルベルと僕は、ギルドに向かってみよう」

「そのあと俺は鍛冶屋に行こうかな」

「私は、回復解放軍のメンバーが滞在していますので、少し会ってきます」


 今後の行動について話していると、門が開き、ロゼが戻ってきた。笑顔が見えるので審査が通ったのだろう。


「大丈夫です、話が通りました。進みましょうか」


 ガタゴトと馬車を進めると、門を超え……僕らは無事にフォレストまで到達することが出来た。初めてきたフォレストは街並みも綺麗で、街ゆく人もナッシュより裕福な服装をしている。巨木の近くだから草の香りや、空気が美味しい。


「ギルドへの報告が済んだら、各自自由時間のあとアストの市役所に昼過ぎに集合しよう」


 とりあえず先に荷物だけは渡さないといけないので、馬車を走らせアルベルタ商会へ向かう途中、広場の中心で宗教の勧誘を見つけた。


「わたしたちー! 封印教団をよろしくお願いしまーす! 一緒にモンスターを封印しましょう!」


 声に反応して視線を向けると、白いドレスのような衣装に白いふわふわ帽子を被った黒髪の女の子が、一生懸命演説している。


「あれは……なんですか?」

「ああ、宗教団体ですね。ヘクセライでもよく見かけます」


 どこの世界でも宗教というのはあるんだな……。入ったことないし、興味ないからありがたみがわからないけども。


「お! 馬車の中からこっちをみてる君! 入りたくなっちゃいました?! 今なら、回復術師ミルトちゃんと握手出来ますよー!」


 か、回復術師……ミルトちゃん?!

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