[ 072 ] 発見

「誰かの声がしませんか?」

「確かに聞こえたような……」


 洞窟の奥の方から確かに声がした。ここまで来ると特産キノコがチラホラ生えており、黄色く光ってて明るい。


(だーれーかー)


「やはり誰かいますね……。急ぎましょう」


 例の冒険者かもしれない。洞窟の奥へと進むとスライムが突然増えてきた。僕が宝剣で数匹倒して進むと、とんでもない光景が飛び込んできた。


「な……なにこれ」

「なんじゃこりゃ……」


 眼前に広がるのは一面、スライムのプールだった。


 軽く五百匹はいそうな量が、五十メートルプール並みの広さに、ギュウギュウ詰に入っている。しかも、しっかり鼠返しでスライムが戻れないように対策まで。


「あ! そこの人たちー! 助けて欲しいっすー!」


 見るとプールの真ん中だけ陸地があり、誰かが倒助けを呼んでるのが見えた。


 しかし……どうしてこんな状況になっているのか、皆目見当もつかない。とにかく助けなくては……村長は、三日前に入ったっきり音信不通と言っていたので、食料もないだろう。


「この量……どうしましょうか」

「俺の魔法は効きが悪いし、先に魔力が尽きるな……」

「僕の重力でも最大でも四メートルしか効果ないし、スライムには効きが悪いんだよね……」


 かといって、この中に宝剣を片手に持って降りたら、身体中にスライムが巻き付いて窒息死する……。


「リュカさんって、属性は何ですか?」

「私は風ですね。近距離系なので、お役に立てなそうです……すみません」


 助けてあげたいのは山々だけど……。


「ごめんなさい! また今度で!」

「ここまで来ておいてー! そりゃないっすよー!」


 まぁそうだよね……。


「あの……わたくしがやっても良いでしょうか?」

「ロゼさんって魔法が使えたの?」

「ええ、護身術として家庭教師が付いておりましたので、それなりには」


 この世界の人は全員が魔力回路を体内に持っているため、何かしらの魔法が使えるが、あまり鍛えたりする習慣がなく。死ぬまで練度★2なんて人も珍しくはないらしい。


「グリーゼル・オルト」


 ロゼがスライムプールに手を向けて呪文を唱えると、吹雪のような風が吹き荒れ、五十匹近いスライム達がカチカチの氷漬けになった。


「す、すごい……」

「寒いっすー!」

「一度に全部は無理ですわ。移動しながらやってみます」

「がんばれっ」


 役立たず三人はただ応援に徹するしか無く。ひたすらロゼの後をついていき応援した。後で聞いたらロゼは、氷属性の遠距離系だそうだ。


 とりあえず練度★三まで鍛えてればある程度の危機は単独で乗り切れるだろうと、練度★三までは家庭教師に鍛えてもらったらしい。


「ふぅ……終わりましたわ」


 途中魔力が切れそうになりブルーポーションを飲みながら、すべてのスライムを凍らせてくれた。


「ありがとう!」

「ふふ、ロイエさんのお役に立てて良かったですわ」


 スライムプールが足場になって、取り残されていた男性の元へなんとか渡ることができた。


「寒い寒い寒い……」

「だ、大丈夫ですか?」

「大丈夫じゃないっす……空腹と喉の渇きと寒さでトドメを刺されるかと思ったっす」


 いや、致し方ないだろう。いまのは。


「ハイネル村の依頼を受けた冒険者というのは、貴方で間違い無いですか?」

「そうっす……。自分、トロイって言います。普段はフォレストのギルドで活動してる冒険者っす」

「怪我はないですか?」

「ううぅぅ……また、ルーエさんに役立たずって言われちまうっすー」

「どうしてこんな状況に?」

「これだから穴を掘るしか脳がない、穴掘りトロイなんて言われるんだぁ」


 よし! 全然人の話聞いてくれない!


 スライムをこのままにしておけないので、一匹づつ宝剣カルネオールで斬っていくが、ひたすら時間がかかる。


 やってみたら、凍っているとハリルベルの剣でも倒せたので、手分けして倒して、約五百個の魔石を手に入れた。


 一時的に魔力限界値を伸ばす魔石だが、クルトさんは後日魔力のコントロールが上手くいかないという弊害を口にしていたので、あんまり食べたくない……。


 かと言って、本当になるのか知らないけど、放置してまたモンスター化しても困るし、手分けして一人百個ずつ持って帰る事にした。


「大量っすね! ギルド報告の証拠に使いたいので貰ってもいいっすか?!」と言うので、魔石はフォレストに着き次第トロイさんにあげる事になった。

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