[ 068 ] 村に行こう

「うーん、もっとおさけぇ……ムニャムニャ」


 道案内のハリルベルと、馬術の経験があるロゼさんが馬を引き、回復魔法を使える僕が馬車で寝ているリュカさんを担当することになった。


 別に回復魔法は二日酔いとかを治す効果はないんだけど……。それにしてもリュカさんが飲んだお酒。どうやらアルコール度数が半端なく高く、いつ起きるのかわからない。


 初めて会って、一緒にギルドに向かった時は、フィーアを取り押さえるくらいだから、あんまり飲んでなかったのかな。


「馬車道があるという事は、その村は何か特産品があるのではないでしょうか?」

「んー、俺も一度だけチラッと見ただけだったからな」


 二人の会話が、ガタゴトする馬車の音の隙間を縫って一緒に聞こえる。


 リュカさんが暴れた後、そのまましばらく進むと道が分かれており、フォレストはナッシュの西部にあるのだが、現在はやや南下している。


 王国騎士団の分隊がナッシュに向かっているなら、当初の予定通りだとして、今日の夜にはフォレストからナッシュの街道を通るはずだ。南下して ハリルベルが見たという村にいれば、やり過ごせる可能性は高い。


 ナッシュを出たのが昼過ぎ。現在はやや日も傾いて来て、あと一時間もすれば夕方になるだろう。出来れば日が出てるうちに村へ着きたい。


 馬を走らせないで、引いてるせいで速度も出ず、馬も喉が渇いたのか予定より水分を消費している。村で補給が必要だな……。


 視界がだいぶ悪くなった夕暮れ時、僕らは無事に村へ辿り着く事が出来た。


「ヒヒーン! プルル」

「どうどう」


 村にはあちらこちらで火が灯っており、馬のいななきを聞いて村人がこちらへやって来た。


「あんれー? 今日は予定にあっだがなー?」

「おめさ、どこのもんだー?」


 なんかこの村! すごく方言が強い……! ナッシュからそんなに離れてないのに……。


 男女二人の村人は、トビ……だった気がする。農家のシーンで干し草をグサグサする槍のようなものを持って現れた。麦わら帽子に繋ぎの服という、どこからどう見ても農家だった。


 それにしても、ナッシュにいた人たちは、結構洋風な顔立ちの人が多かったのに、この村はすごく日本っぽいの気がする……。


「フリーレン商会の者です。道中で行者が酔い潰れてしまいまして、申し訳ありませんが一晩馬車を停めさせて頂けないでしょうか?」

「いーげど、おまーあれよー? なぁ?」

「んじゃなー、わしらも忙しいげんなー」

「もちろん、お礼はさせて頂きます」


 ニコッとロゼが微笑むと、村人は「いま暇になったがやー」と、馬車を村へ入れてくれた。現金な人たちだ。


「では、わたくしとロイエさんは村長に挨拶をして来ますね。ハリルベルさんはリュカさんの介護をお願いします」

「え……いやあの、リュカさんと二人は気まずいというかなんというか」

「大丈夫、リュカさん酔ってる時の事何も覚えてないから」

「そうなのか?」

「それに、ハリルベルなら何があってもヴェルアで合図出来るだろ?」

「俺の魔法は狼煙か、わかったよ。早く帰って来てくれよ」


 不安がるハリルベルといまだに寝ているリュカさんを馬車に残して、ロゼと村長の家へ案内された。


「失礼ですが、ここは何というか村なのですか?」

「こごか? こごは、ハイネル村だで。はーい寝るってなぁー?」

「がはは」

「はは……」


 どうやらこれが、この村の持ちギャグらしい。まぁ悪い村じゃなさそうで安心した。


「こごがー、そんちょの家だで」

「そんちょー! らいぎゃぐだー!」

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