[ 049 ] 地震発生
「なんじゃ、この地震は!」
「なにか山の方で起きたようです! 僕、見てきます!」
ジオグランツの浮遊力と自慢の脚力で、階段を飛ぶように走ると、すぐにキーゼル採掘へ辿り着いた。
「 ハリルベル!」
「ロイエ! こっちだ!」
キーゼル採掘所には、採掘メンバーがみんな集まっていた。どうやら、仕事を終えてバーに集まっている最中だったらしい。
「何があったの?」
「それがさっきの地震で、二番坑の奥から岩が崩れる音が聞こえてきて、いまグラナトと親方が様子を見に行ったんだ」
グラナトは、 ハリルベルがどこからか拾ってきた男性で、採掘の腕前が良く親方からは絶大な信頼を獲得。 ハリルベルを差し置いて、現在は実質的サブリーダー的な位置付けにいる人物だ。
「ありったけライトつけろ!」
街の中とは違い、山の近くにあるキーゼル採掘所は暗い。魔力を流すとしばらく点灯する魔力ライトに、僕も手伝って明かりをつける。
親方が降りたという二番坑をみていると、肩から血を流した男性を担ぎ親方がが出てきた。親方も右足を負傷したらしい。
「フェルスアルトファーラー・オルト!」
坑道から出るなり、親方が練度★四の土魔法をオルトで強化して発動させた。周囲の岩が次々と入り口に飛んでいき、あっという間に入り口は塞がった。
「すごい……」
「ああ、山にいる限り親方に敵う奴はいねーよ」
ならあの怪我は……。
「親方! 大丈夫ですか? おい! 金庫からレッドポーション持って来い!」
「リーベ。やめろ、無駄な金使うな。これくらい平気だ。寝てれば治る」
僕が……と名乗り出ようとしたけど ハリルベルに止められた。そうだ、僕はいちゃいけない存在なんだ。こんな人がたくさんいる場所では回復魔法は使えない。
「どうしたんじゃ、キーゼル」
振り向くと後ろには、マスターが息を切らせて立っていた。ここまで来るのにマスターの年齢では厳しいらしい。
「二番坑に、リーラヴァイパーが出た」
「なんじゃと! 数はどうじゃった?」
「奥まで見てねぇが、恐らく五十以上」
「なんと……」
親方もマスターも酷く慌てている。リーラヴァイパーってなんだろう。モンスターだとは思うけど。
「 ハリルベルわかる?」
「いいや、ただ親方に怪我を負わせるほどヤベー奴ってのはわかる」
「そうだね……」
確か、親方は練度★5の土魔法使いだ。それが歯も立たず撤退とは……。
「すぐに手を打った方がいいな。どれくらい動かせる?」
「むぅ、洞窟とは弱ったの……」
「マスター、どうしたんですか?」
マスターは二番坑を指差して教えてくれた。
「あそこの二番坑が恐らく、先ほどの地震で坑道が崩落、リーラヴァイパーの巣と繋がったようじゃ」
「リーラヴァイパーってのは、強いんですか?」
「そんなに強くないんじゃが……毒攻撃がやっかいでの、ポーションでは治せないのじゃ」
毒か、回復術師の魔法にそれっぽいのはありそうな気もするけど、今の僕にはわからない。
「毒攻撃を防ぎつつ攻撃出来る者が、この街におればいいんじゃが……」
「ミアさんはまだナッシュにいるんですか?」
「もう他の街に向かったが、ミアは雷魔法使い使いだからな。ほとんどの魔法は土に吸収され、山ではランク最低レベルに弱くなるんじゃよ」
ああ、そうか。魔法も使えない迷子をつれて坑道探検なんて自殺でしかない……。
「親方! 俺が行ってきますよ!」
「 ハリルベル……。ダメだ、お前では毒を防げん。やれて後方支援だろう。難易度的には練度★四の冒険者は最低でも一人必須だ」
毒攻撃を無効化出来て、狭い坑道でも戦えて、練度★四の冒険者か。そんな人がこの街にいるわけ……いるな。
「わしの水魔法では、坑道が水浸しになって逆に危険じゃし。リーラヴァイパーが溢れ出すのが先か、他の街から冒険者に来てもらうのが先か、賭けてみるしかないのう」
「あの、マスター。条件にぴったりな冒険者がいます」
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