[ 045 ] 重力魔法の効果検証

 やった! 練度★二になった! クルトさんの検証結果と同じで、約二十四時間で練度が上がった。ジオフォルテか……どんな効果なんだろ。


 ちょっと試してみるか……。僕は、前回クルトさんと会った公園は向かった。あそこならあまり人がこないので練習にはもってこいだ。


 僕は自分に掛かっていたジオグランツを解除すると、道端の石を拾いベンチへ座った。


「まずは、ジオグランツの効果を検証しよう」


 判明しているのは、テトをゆっくり落下させた。僕の体重を軽くした。剣を爪楊枝くらいに軽くした。この事からなんとなくわかっている事がある。


「ジオグランツ」


 重力魔法で、手に持った石にかかる重力を限界まで軽くした。この状態で手を離すと石は宙に浮いたままだった。


「つまり、等倍が限界って事か……」


 そもそも重力とは惑星の引力と、自転による遠心力の引き算による結果だ。例えば惑星の引力が六、遠心力が五、なら全てのものに一の重力がかかる。


 重力というは大きければ大きいほどかかるため、十キロの物体には十キロのGがかかる。すなわちジオグランツの限界は等倍、つまり軽くする体重が五十キロの人なら五十キロ軽く、または五十キロ重く、それが限界だ。


 漫画みたいに「重力で押し潰す!」とかは出来ない。五十キロの人が五十キロの荷物を持つような物だ。重くて動きにくくはなると思うが、それで死ぬような事はないだろう。


 つまり、ジオグランツを使って空を飛ぶ事は難しい。引力と遠心力を0にして浮くことは出来るが、自由自在に飛ぶことは出来ない。


「重力と風のダブル魔力回路なら行けたかも……」


 宙についている石を、上方向に軽く突くと石はふわふわ上場していき、四メートルほど上がったところで落ちてきた。


「四メートルが、ジオグランツの限界か」


 つまりそれは有効範囲が四メートルという事だ。それより離れたら強制解除される。次は逆に重くしてみるか……。


「ジオグランツ」


 石を拾って魔法を掛けたが、右手に持った石は動かない。重くも軽くもならない。恐らく連続発動の制約時間内だ。


「ジオグランツ」


 石がズシっと重くなった。およそ十秒。リンドブルムと戦ったからわかるけど、戦闘中の十秒は長すぎる……。やはり魔法は便利だけど万能ではない。


 同じサイズの石を探して左手で持ち上げると、重くなった石と同時に落としてみる。魔法をかけた右手の石は約二倍の速度で落ちた。この辺も計算通りだ。


 重くなった石を再度拾い上げ、今度は前に向かって投げる。石は放物線を描いて地面に落ちる。あくまでジオグランツの重力は下方向にかかっている。


「横方向に重力をかかれば、超豪速球を投げるなど攻撃手段に使えるかと思ったけど、無理か」


 ある程度ジオグランツの効果検証は終わったので、新しく取得した練度★二の魔法、ジオフォルテの検証をしてみることにした。


「ジオフォルテ」


 先ほどの石を再度軽くしてみた。練度★二なら効果二倍かと思ったが、石はその場で浮遊しただけだった。つまり……ジオグランツと全く同じ、等倍が限界だった。


「同じ効果?」


 そのまま宙に浮いた石を指で上に弾くと、今度は二メートルの位置で強制解除されて落ちてきた。


「え、効果範囲が半分?」


 下方向にも試してみた。ベンチの手すりに立って二メートル以上の位置から今度はジオフォルテで重くした石を落としたら、二メートルを過ぎた時点で落ちる速度が元に戻った。


「完全にジオグランツの下位互換だ……何の意味があるんだろ。魔力消費が少ないとかかな? 逆に少し多い気がするけど……」


 クルトさんは練度★二で二週間と言っていた。僕はもう五日しかないんだ。同じやり方では間に合わない。


「ジオグランツ」


 再び、自分の体にかかる重力を少しだけ緩和して軽くした。後五日間、これで間に合うかわからないけど、やってみるしか無い。


「ふふ、何をぶつぶつ言ってるんだい?」

「クルトさん! まだ夕飯まで時間ありますよ?」

「ロイエ君の結果が早くみたくてね」

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