[ 046 ] 魔石inクルト

 僕はクルトさんに、先ほど試した重力魔法の検証結果を伝えた。


「なるほど――。他の属性魔力回路だと、練度★二は攻撃ではなく補助的な魔法を覚える事が多いのに、重力は違うみたいだね」

「はい、連続発動の制約もあるので、どっちかしか使えませんし、現時点では完全下位互換で意味がわかりません」

「詳しい人に聞いた方がいいかもしれないけど、重力魔法は結構レアだから、知ってる人はこの街にいないと思うな……」


 なら、やはり魔法都市ヘクセライに一度行ってみたい。魔法都市というくらいだから、同じ魔法を使う人がいると思うし……。それにはまず入国出来ないから、やはり身分証としてギルドカードが欲しいなぁ。金貨後四枚……。


「ちょっと、そのジオフォルテで、昨日と同じことやってみないかい?」

「昨日と同じ?」

「砂の鎧に、軽い剣のコンボさ」


――「フェルスアルトファーラー」


 昨日と同じように公園の砂を使い、僕らの前に等身大の砂の兵士が現れた。相変わらず動きが素早くて強そうに見える。


「ロイエ君」

「ジオフォルテ!」


 公園に突き刺した剣を抜くと、魔法をかけていく。無重力状態は剣がすっぽ抜ける危険があるから、やはり昨日と同じく爪楊枝くらいの重さにしよう。


「どうぞ」

「よし……」


 砂の兵士が僕から剣を受け取ると、ヒュンヒュンと軽やかに振り回し始めた。筋肉などが関係ないため、人間では到底出来ない動作や角度も出来るらしく、魔法無しの実践なら相当強いと感じた。


「はぁ……やっぱり良い……僕の砂の兵士」


 よほど砂の兵士が好きなのか、うっとりしているクルトさんの袖を引っ張ると、ごめんごめんと検証の続きをし始め……ようとして、クルトは砂の兵士と共にグシャリと倒れた。


「ぉぇ……うぷ」

「ま、魔力切れですか?」

「ゴクゴク! う、うん、切れた」


 時間にして三十秒程度しか経っていない。本当にクルトさんの最大魔力量は少ない……。魔力量……。あ。


「クルトさん! これを食べてください!」


 僕はポケットからロゼにもらった魔石を取り出した。豆粒程の大きさの魔石は青とも紫とも言えない色が内部で揺れている。


「え? なに? 魔石? うわ、初めて見たっ! てかヤメテ! モンスターになるぅうああああ」

「ちょ! なりませんよ!」

「騙されないぞぉおお! 死んだ婆ちゃんが魔石を触るとモンスターになるって言ってましたー! 騙されませんー!」


 幼い頃の刷り込みなのか、よほど嫌だったらしく、ベンチの裏から出てこなくなってしまった。


「Dエリアに魔石の買取屋があるんですが、先日そこで誤って魔石を食べてしまったんです」

「ご愁傷様です」

「まだ死んでません、話を聞いてください」

「そしたら、最大魔力量が増えたんですよ……」

「なんだって?!」


 それまで怯えてたクルトさんが、ベンチを跳ね除けて顔を近づけてきた。魔石を触りたいけど理性が拒否するのか、ムギギギと唸っている。


「ほんとーに、魔力量が増えるんだな?」

「ええ」

「目を瞑ってるから口に入れてくれ!」

「あ、口に入れると不思議と消えてしまうので、飲み込んだ感覚はありませんから大丈夫ですよ」

「うう……」


 よほど嫌なのかこちらを見ようとしないで、上を向いて口を開けているので、問答無用でロゼから貰ってきた二十個全部口に投入してみた。

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