[ 038 ] クルト・グレンゼ
「いいけど、事情を聞いてもいいかな?」
「はい、実は……」
僕は冒険者になるために試験に受かったけど、練度が足りてないので、後六日以内に練度★三まで上げたいことを話した。
「なるほどね。脚力だけで試験合格はすごいな」
「重力魔法で結構余裕でした」
という事にした。
「後六日で練度★三か……いけるかもしれない」
「本当ですか?!」
「あぁ、オレね。練度★一から練度★三まで二週間だったから、死に物狂いでやれば一週間。六日ならギリギリって感じだと思うけど」
「やったぁ! クルトさん! 是非! お願いします!」
こうして、どうすれば期間内に★三まで上げれるか、クルトと相談する事になった。
「まず、オレが練度★二になった方法を教えようか」
「はい!」
ゲームの攻略法というか裏技を教えてもらってるみたいでワクワクする……。
「土魔法の練度★一は、ザントシルド。砂を集めて壁を作る魔法なんだけど、オレはそれを発動させっぱなししたら、すぐに練度★二になったよ」
「なるほど! 発動させっぱなしが最短なんですね!」
なんだか悪い事を聞いてるみたいでドキドキしてきた……つまり、発動回数ではなく、発動時間の累積って事だ。
「何日くらい発動させっぱなしでした?」
「そうだな確か、二日くらいかな? 寝てる間はやめてたから、寝る間を惜しんでやれば一日でいけると思う」
「つまり二十四時間……あれ、クルトは最大魔力が低くてすぐに魔力切れを起こすって……」
「ああ、だからブルーポーションのがぶ飲みパワープレイで乗り切った! クックック」
笑い方が完全に悪いやつの笑い方だ……。
「あ、だから寝てる間はブルーポーション飲めなくて、起きてる時だけやってたんですね」
「そうそう、まぁ寝ないでやってもよかったけど、そこまで切羽詰まってなかったから」
待てよ?
「僕は今日の昼頃から、ジオグランツを発動させたままでした」
「なら、明日の昼頃には練度★二になってると思うよ」
「やったぁ!」
よかった……クルトに会って練度★三への道が見えた気がする……。
「ちなみに練度★二から三にはどれくらい?」
「んー、二週間くらいだね」
「ちょっとそれだと間に合わないかも……」
「ああ、ここはね。オレも悩んだんだー。練度★一のザントシルドか、練度★二のドルックのどっちで上げた方が早いのか」
「なるほど……」
ドルックって、親方が僕の足枷を破壊した魔法僕……。僕もジオグランツの次、練度★二で何を覚えるかわからないからどうしよう。
「クルトさんは、どっちで練度★三まで?」
「オレは、練度★二の方が効率良いのかなと思って、ドルックでひたすら岩を破壊して二週間だったよ」
「なら重力魔法の練度★二で、何が覚えられるかによりますね」
「そうなるね。使い勝手次第だね」
とりあえず明日にならないと、練度に関してはどうにもならない。ただ、クルトにタダで教えてもらうだけ教えてもらって、何もしないというのはどうにも居心地が悪い……。
「何か僕に手伝える事ありますか?」
「んー、ロイエ君は重力か……重力で軽く、軽く? あっ!」
何か閃いたようで、クルトは公園の砂場に突き刺したままの剣を抜いて持ってきた。
「これ! これを軽くしてみて欲しいんだ!」
「わかりました」
僕は一度ジオグランツを解除して、剣を掴む。
「ジオグランツ」
唱えた瞬間、剣の重さが変わる。あまり軽すぎるとふわふわと飛んで行ってしまうから、爪楊枝程度の重さへ調整してクルトへ渡した。
「なにこれ! めっっっちゃ軽い! これなら行けるかも!」
クルトは子どものようにはしゃぐと、再び剣を公園に突き刺し……呪文を唱えた。
「フェルスアルトファーラー」
カタカタと公園の砂が集まり、先ほどと同じように人の形へと集まっていく……。あっと言う間に砂の兵士が完成すると、兵士はゆっくり剣の前に行き……。一気に引き抜いた。
「……うぉおおおあ! すごい! やった! 出来た! 見てよ! ロイエ君!」
砂の兵士は、抜いた剣を上段に構えて袈裟斬りを披露するも人の形を維持できている。
「砂が崩れない! いままで重い剣を持つと、そこだけ力を集中しなきゃいけなくて、バランスが崩れて崩壊してたけど! これなら行ける!」
なるほど、これが土魔法の練度★四の近距離系の場合の戦い方か……。確かにこれなら砂の兵士はやられてもまた出せばいいし、無敵に近い。
ただ……。
「ロイエ君がいる時しか使えないか……」
「そうですね……」
傷を負うことも死ぬこともない無敵の兵士だけど、一体しか出せず、砂の兵士が魔法を使えるわけでも無く、砂の兵士を出してる間は、他の魔法が使えないから練度★一のザントシルドで自分を守る事も出来ない……。
実践だと厳しいかもしれない。
近くに重力魔法使いがいないと使えないし、僕も近距離系の重力使いだから、離れすぎると魔力消費が爆発的に上がり、最悪強制解除される可能性もある。
クルトの考案した砂の兵士は、とにかくコスパの悪い魔法だった。
「あのさ。ロイエ君が冒険者になったら、一緒にクエストに行ってくれないかな?」
「いいですよ! 是非!」
「よーし! やっ……おえぇえええ!」
突然、クルトと砂の兵士が同時にグシャと潰れた。
「うわあ!? ど、どうしました?!」
「魔力……切れ、た」
どんだけ魔力量少ないんだ……。これでは、とてもじゃ無いがまともに戦えない気がする……。
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