[ 029 ] 魔石飲み込む
「ど、どうしよう……おぇ」
「これは……チャンスですわ!」
飲んでしまった魔石を吐き出そうと胸を叩いているとロゼは、なにやら一冊の本を取り出してきた。
「ありましたわ! ラットによる魔石取り込み実験のノート! ラットに魔石を飲み込ませた時の研究資料ですが、体調変化の様子がよくわからなかったんですよね……ロイエさん! こっちにきて座ってください!」
「わかりました……あの、この道具は……」
質問をしてもロゼは無言で僕の腕や足、頭に器具を取り付けて行く。健康診断の時みたいだな……。
「なるほど、脈は変化なし、体内電気の流れも正常……と。ロイエさん体調に変化はありますか? 気持ち悪くなったり、お腹痛くなったり」
「いえ……あの取り出しすのって無理ですかね……」
「無理ですわ! ラットに入れた時も取り出そうとしたら体内で消えてしまって、どこに行ったのかわからなかったんですの」
ボソッと「人体に試すのは世界初ですわ」と、聞こえた。
あれこれ計器の数値を測ると、ガリガリとすごい速度でノートに記載して行くロゼ。いまのところ体調は大丈夫。やはり便と一緒に出てくるのかな……。しばらくするとロゼの手が止まった。
「なるほど。これは大変貴重なデータが取れそうですね……申し訳ないんですけど、毎日来てもらえないでしょうか?」
「え?!」
「今後もロイエさんの体調に、なにか変化があるか確認したいのです! これは魔石研究における新しい可能性なんです!」
「でも僕も忙しくて……」
ジャックの飲食店で働く日は、本当に朝から夜中までやるのでここまで来る時間はない。
「わかりました。来れない日はわたくしがお伺いに行きますね」
「ダメだよ。西地区は女の子が一人で歩くような場所じゃないんだ」
「あら、わたくしこれでも冒険者の資格も持ってるんですわよ?」
「ということは、練度★三以上……」
「ええ、わたくしの持つ魔略回路は氷ですわ」
「わかりました。でも、本当に危ないのでどうしても来れない時だけにしましょう」
「はいっ」
計測器具を外してもらい、お昼という事もあって店を出ようとしたが、一つだけ気になっている事があるので、ロゼに聞いてみた。
「どうして中央区のDエリアに店を構えてるの? 富裕層はみんな東側に住んでると思ったけど……」
「ええ、実家は東側にありますけど、ご存知の通り東門の外にあるメーア海岸はモンスターが発生しません。それゆえ東側で店を構えるより、本当は西側に店を出すのが最善なのですが父、から猛反対されまして……仕方なく西側に近いこの中央区Dエリアに出店しましたの」
「なるほど……店の外見を豪華にしないのは、お金が無いと思わせるためにあえてか……」
「はい、父の案で外見はわざとボロボロにしてあります」
ロゼにお昼をご一緒しませんか? と言われたけど、最初のデートで男が奢ってもらうわけにもいかない。ロゼに挨拶を済ませて店を出ると、 ハリルベルに教えて貰ったDエリアの激安飲食店は足を向けた。
「なんだ……?」
体が暖かいような……。ほんの僅かだが、魔力がみなぎる感覚があった。さっきの魔石の影響かもしれない。明日ロゼにあったら報告しよう。
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