[ 027 ] 中央地区Dエリア
また迷子になったミアの事は早々に諦めた。彼に付き合っていたら何も進まないのを悟ったからだ。とりあえず買ってしまった世界地図は折りたたんで、今度ミアに会う事があったら渡そうと、ポケットへ入れた。
「さて、どこから見ていくか……」
ハリルベルに聞いた話にだと、中央地区は五つのエリアに分かれているとの事だった。
まずは中央広場、中央地区の中でも最大級の広さを誇り、出店も多いため掘り出し物が多いのが特徴らしい。その分、乱闘騒ぎなどもあるため注意が必要らしい。
それ以外は、中央広場を中心に時計でいう十二時から三時の方向が中央区Aエリア。三時から六時の位置にあるのがBエリアと時計回りにエリア名が振られており、あとはCエリアとDエリアが続く。
中央地区はかなり広い為、今日はAとDエリアを見ていこうと思う。クルツ平原側から入るナッシュの正門は、エリアBとCが一番近く、客も多い事からどんな店でも繁盛すると言われている。
つまりその分、競争率が高いく応募する者も多い為、単純に倍率が高く時間の無駄になる可能性が高いからだ。
今日は、現在いるDエリアを午前中、Aエリアを午後診て回ることにした。
現在九日目、散策に二日使うと残七日。一週間で金貨四枚を得られる仕事となると、最低でも一日銀貨六枚は必要である。欲を言えば、生活費のためもう少しあると良いけど……。
Dエリアに入ると、西地区に隣接地してるせいかガラの悪い連中も結構住んでいる。道でたむろしている若者やゴミを漁る老人もチラホラ。先ほどの道具屋のように店もあるにはあるが、ぱっと見ぼったくり価格になっている。
この地図も金貨一枚だったけど、適正価格がいくらなのかわからない……。ミアのお金だし、緊急時だったから仕方ないがなかった。値段分は使わないと勿体無い、後で少し見せてもらおう。
そのまましばらく歩くと一軒のボロいお店を見つけた。店の上には石?のオブジェ。採掘所からは遠いし何屋だろ?と思い、お店に入ってみた。
「ごめんくださーい」
ドアを開けて入ると、店の中は石が入った瓶がたくさん並んでいる。石コレクターの店だったかな? たまにカッコいいと思う事もあるけど、別にお金を出してまで欲しいとは思わない……。
よく見ると部屋のあちこちらに、気品を感じさせる小物がチラホラ……。儲かっているのだろうか。
「こんにちはー?」
「ああああああああ! これもダメですわー!」
店内を見回していたら、ガバッ!と瓶の山から水色のロングヘアーの女性が、苦悩しながら飛び出してきた。
「なんでですの?! この薬品も無反応だなんて……、わたくしの理論のどこが間違っているというのですか!」
石の研究者なのかな。僕に背を向けると、頭をブンブンとシェイクしながらブツブツとなにか一人で語り始めた。
「やはりもう一度、生体実験に方向性を戻した方が良いのかしら……薬品実験では効果がわかりませんわ」
「あの――」
後ろを向いている彼女の肩をツンツンすると、ギュルンとクビだけ回ったのかと錯覚する勢いでこちらを向いて、僕の指と自分の肩を交互に視線を動かすと奇声を発した。
「あああぁぁああああ!」
「あのこちらの店はどういっ「わたくしに! 触れましたね?!」」
「え? あ、ごめんなさい。気付いていなかったようなので、ツンツンと……」
すると彼女は近寄ってきて、僕の顔をまじまじと見つめはじめた。彼女の年齢は恐らく十九歳前後。水色の髪が空のように綺麗で、吸い込まれそうな黒いパッチリとした瞳が印象的な美人だった。
彼女は、はぁーーと長いため息を吐き出すと、意を決したのか、バッとしゃがみその場で正座をした。
「わたくしは、ロゼ・フリーレンと申します。次にわたくしと触れた男性と結婚すると決めていたんですの……不束者ですがよろしく致しますわ」
「まって?」
店員さんを呼んだだけで結婚する事になってしまった。
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