08話
「あの、なんで仲直りができたのに逃げているんですか?」
「逃げているわけではないぞ、私はまた再開をしただけだ」
教室でなにをしているのかは分からないがそこまで興味もないので自分のしたいことをしているだけでしかなかった。
そもそも自分のところにもっと来いと言うタイプではないことを少しだけでも一緒にいれば分かるだろうからこのままでいい。
「花さんもいますよ」
「ああ、それはこっちにくっついているから分かっているぞ」
私の腕がお気に入りのようで一時間前の休み時間にもこうしていた。
いいよな、後輩ならこうして甘えようとやはりおかしくはない。
私が花に対してであっても同じことをしたらそれはもうだいぶやばい絵面というか、そういう感じになる。
「最近は前より寒い」
「そうか? 三月が近づいて暖かくなったと思うが。それより十二月と比べて髪が少し伸びたな、いまとなっては私より長い」
触れたくなる髪質だ、見ていれば分かる。
それでもなんとか耐えられているのは元々べたべた触れたりしないのと、一応、二美のことを考えてのことだった。
もっとも、本人が頭を撫でてほしいとか頼んできた場合には関係ない、やらせてもらおうと決めていた。
「それは初名が切っちゃったからだよ」
「ある程度以上になると面倒くさいからな。さて、留まっていてももったいないだけだから少し歩くか、いい運動になるぞ」
「行く」「行きます」
とはいえ、私と保村が集まるとどうしても外や反対側の校舎――つまり静かな場所がメインとなっていく。
花が所謂陽キャラなのかどうかは知らないが、もしかしたらつまらないと感じてしまうかもしれない。
二美だったら間違いなく文句を言うような場所達だ。
「私達ももう二年生になる」
「そうですね、花さんと同じクラスになりたいです、一人だと本当は一緒にいたいのにその気持ちを片づけなければならなくなりますから」
「初名が卒業をしても保村がいてくれればなんとかなりそう」
そこで簡単に変わってしまうようなら……。
だが、仕方がないか、どうしたって平日だけでも安定して会うのことのできる人間を求めるのは当たり前のことだ。
「分かりました、それなら頑張ります」
「ん、よろしく」
いや、自分がこの場所からいなくなったときのことなど本当はどうでもいい、それより気になるのはすぐに「図書室に行ってきます」と保村が別行動を始めることだ。
だって今回は私と二美というわけではなく求めている花がここにいるのにこれだからだ、寧ろ連れて行っていいから仲良くしてほしい。
だからこういう点でも後輩の方がよかった、年上だと本人が求めていないところまで考えて余計なことを言ってしまいそうになるからだ。
「保村はいつもあの感じなのか? こう……近づいてきてもすぐに〇〇だからと離れてしまうような……」
「そう、私だけのときも同じ」
「読書や本を好きでいることを否定するつもりはないが、あんなことを言っておきながら中途半端というか、家に帰ってからでも十分楽しめると思うがな」
家族というわけではないのだから別れるのが当然のわけで、それまで一緒にいたいと考えるのは――単純に私が人といたいからなのだろうか?
「初名が二美ちゃんに対して遠慮をしているのと同じかもしれない、本当はもっと一緒にいたいけど空気を読んでくれているのかも」
「はは、相手が自分といたがっているなどという考え方をできるのはすごいな」
「でも、毎回一緒にいたいとかさっきみたいに一緒のクラスになりたいとか言ってくれているから自惚れというわけではないと思う」
「花にとってはそうだな、だが、私も同じような考え方をしたら二美に笑われてしまうだろうな」
あ、真顔で「なにを言っているの?」と聞かれる可能性が一番高いか。
二美だってなんでも我慢ができるわけではない、相手が変なことをしていれば他の誰よりも早くツッコむ、注意をする人間だ。
「私は我慢をすることなんてできないからこうして初名のところに行く、二美ちゃんと付き合っていても関係ない」
保村もそう言っていたのだがな、花は本当の友達だからその相手のためならしたくないこともできてしまうということか。
「私でいいなら相手をさせてもらう、来たいなら来ればいい」
「うん」
「だが、正面から抱きしめるのはやりすぎではないか?」
頭が近くにあるとそれだけ試されているということになるから勘弁してほしい。
「腕だけで我慢をしようとしているときにたまたまそうなっているだけ」
「無理があるな、だがまあ、別に私的にはいい――」
ま、まあ、花に引っ付かれて嫌だというわけではないから自由にしてくれれば――と現実逃避をしていた。
花とこうして盛り上がっている場合にのみやってくるのは何故なのか。
「なにをしているのよ、なにが私的にはいいよ」
「この場所がよく分かったな」「この場所がよく分かったね」
「教室でゆっくりしていたら突然、ぞくりとしてね、それで探してみた結果がこれよ」
風邪かもしれないからじっとしておけと言わせてもらい運び始める。
目的地は彼女の教室、三分とかからないから悪化することはないはずだった。
「熱はないか? もしあるのなら家まで運んでやるが」
身長差はあっても彼女は軽いから問題はない、それどころかこういうときはすぐに無理をするから先に動いておかなければならなかった。
「あの、風邪ではないのだけれど……。あれよ、嫌な予感がして探したという話よ」
「私はもう暖かいと思っているがまだまだ冬だからな、ぞくりときたという話だったから心配になったのだ。だが、そういうことだったのだな」
とにかく風邪とかではなくてよかった。
家まで運んでしまえば途端に態度が変わるから駄目なのだ、いまのこの付き合っている状態で露骨に変わられたら変なことをしてしまうかもしれないから避けたい。
あとは単純に友には元気でいてほしいというやつだった。
「……あなたのせいでクラスの子からからかわれたじゃない、付き合っているのって何回も聞かれて疲れたんだから」
「それなら運ぼう、勘違いで疲れさせてしまったのだからな」
その場合でも事実付き合っているのだから面倒くさいのであればはっきりしてしまってもいいと思う。
「怖くないか?」
「え、ええ、少し恥ずかしいけれど」
「これからも任せてほしい、私は二美を支えていく」
「……けれど一方的すぎるのも気になるのよ」
「大丈夫だ、二美だって私のためになってくれているぞ」
こちらはいつだって彼女のことを求めているのだから。
だが、細かくは言いたくない、顔を合わせられなくなると困る。
そもそもいまは普段通りでいなければ抱いている分、危ないから彼女のためにもそうするのだ。
「ねえ、今日も来てくれる?」
「ああ」
「それならまた泊まってほしいの、あと、あなたからまた抱きしめてほしくて……」
「分かった」
今度は徹夜をしなくて済むから体的にも楽だ。
寝るまでの時間が多くなるようにさっさと食事や入浴なんかを済ませた。
ただ、自分の家で食べてくると言っても全く聞いてくれなかったことが気になることではあるが。
「初名、入って」
「湯冷めして風邪を引いたらあほらしいからそうしよう、それとこうすればいいのだろう?」
「ええ、あ、今度は温かいわ」
「それは暖房が効いているからだな」
って、何故だ、どうしてまた私からすることになっている。
彼女はあれから自分からくっつくことをやめてこちらに求めてばかり……。
花のことを止めるくせに自分は中途半端なんてありえないぞ。
「今度は同じクラスになれるかしら」
「同じクラスになれたら私的には楽でいい、いまのままだといつまで経っても来なくて待つ羽目になるからな」
浮気をしているなどと疑うわけではないがやはり来ないと気になるときもある。
これまでずっと一緒に過ごしてきた相手だというのが一番だが、ほんの少しぐらいは彼女視点で気にしている自分もいた。
ありえないなどと内で文句を言っていてもクリスマス付近の自分が戻ってきているわけで、関係が変わったいまだと分かりやすく変化をしているのだ。
「お友達が行かせてくれないのよ、初名に会いに行くと言っても『毎日一緒にいるんだからいいじゃん』と言われてしまってね」
「だが、事実だろう? ま、最悪はこうして放課後だけでも一緒に過ごせれば――」
「花ちゃんと仲良くできるから?」
「学校でぐらいしかいられないからな」
どうしたって集まればどちらかを優先する形になる、ただ、彼女の場合はそこにいても花がいると黙りがちになるからいてもいなくてもという感じだった。
寧ろ私が黙っておくからまた前みたいに盛り上がってくれればいい。
「でも、大丈夫よね、花ちゃんならちゃんと考えて初名に甘えてくれるわ」
「私は基本的に拒まない、それでいいか?」
「なんで一時期は止めていたの?」
「花が二美の特別になるかもしれなかったからだ」
でも、こうなってしまえば止める意味がない、やりたいようにやらせておく。
「分かったわ、キスをさせたりしなければそれでいいから」
「流石にそれは私が許可をしない」
「じゃあ……ここに帰ったら沢山してちょうだい」
「まあ、私らしくやっていくよ」
拒んだ結果、他の自由にやってくれる少女を求められても困るからな。
そんなことになるぐらいなら恥ずかしい気持ちになろうと彼女にちゃんとしておいた方が自分的にもよかった。
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