第2話 逢魔ヶ時
多くの鬼達が膝を付いたり、倒れて大の字になって天を仰いでいてまさに
数十体にも及ぶ鬼の一団の中から、一人の大鬼が前に出て来る。
鮮血のような真っ赤なカラダは巌のように大きく立派で、額には大きく立派な一本角が生えた鬼であった。
源氏の方の名乗り方に似ている。流石は関東武者である平将門の配下の悪鬼だ。
その際に
鬼の邪気を吸わない様に気を付けて深く息を吸い。こちらも名乗りを上げる。
「我は
「知れた事よ。古き帝が支配する世に災いをもたらす事を、ご神託を受け新たな帝とならんと世に覇を唱えた殿は求めておられるのだ……」
――――という事は京の都で目撃された鬼共は、いわゆる斥候と言った所か……
「陰陽師。安倍春秋よ、貴様我らの戦に水を差すような真似はするまいな?」
「これでも俺は陰陽師の端くれでね……そういう訳にもいかない――――」
刹那。
悪赤丸は腰に佩した大太刀に左手を添わせ鯉口を切る。
それはいつでも叩き斬る! と言う覚悟の表出だろう。
「戦を愚弄しおって! そこに名折れ! 叩き斬ってくれるわ!」
右手で太刀の柄を握り、素早く抜刀すると足を前後にしながら逆八の字に開き、刀を八相に構える。
「生憎と俺は武士ではなく豪族出の貴族。それも曾祖母は狐なもので……生憎と田舎武者の作法には詳しくなくてな……まぁ歌もロクに読めぬ無作法者の言など軽く聞き流してくれ……」
「貴様ぁぁあああああああああああッ!!」
怒りに任せて悪赤丸は、大太刀を袈裟斬りに振るい俺を守る為に前に出た香狗を、一太刀と返しの二太刀でばったばったと薙ぎ払い。三間(約4.8Ⅿ)ほど殴り飛ばされる。
「犬ころに後れを取る我ではない!」
左手を鞘に添わせ鯉口を切り、右手で太刀の柄を握ると素早く抜刀するし、足を前後にしながら逆八の字に開いて衝撃に備え、刀を頭の高さで寝かせるように構えて、袈裟斬りに振われた太刀を剣で受け流す。
「ぬ! お主剣を使うのか……」
「
直後、悪赤丸は地面に当たった姿勢のまま無理やり太刀を振り抜いた。
半円のような軌跡を描き、袈裟斬りに大太刀が振り抜かれる。
武者の鎧程の防御力を持った防御術が、悪赤丸の大太刀による攻撃を防いでいる。
「ぬんッ!」
悪赤丸が声を出して大太刀に力を込める。
だが術も限界なのか、術が作り出した結界がブレて霞んでゆく……
次第に太刀の白刃がめり込んで行くのが見える……
不味いな……仕方ないここで呪符を使うか。
「
悪赤丸の周囲に散らされた呪符が光を放ち、明王が所有する悪魔や煩悩を縛り屈服させる縄である。
「むっ! これは不動金縛りの術! それも
俺は感嘆の言葉をこぼす鬼を無視して、不動金縛りの術を唱え続ける。
羂索がミシミシと音を立てて、悪赤丸の肉体へ食い込んでいく……
捕縛は成功した。後は調伏し払っていくだけだ……そう思っていると……
ズン! と胃の
「なんだコレは……まさか!」
「我らが帝、我らが棟梁
悪赤丸が苦しそうに、だが歓喜の
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます