第10話
母は「はっ」とトリップしていた自分から、我に返ったのか「ごめんね」と俺に謝罪する。
「春明、次の挨拶に行きましょう」
母と俺は次の列に並んだ。
「今度はどこのお家?」
今の世の陰陽師の家柄に詳しくない俺はそう言って、引き続き母から情報を集めることにする。
「今からご挨拶しに行くのは、さっき説明した清明様の師匠筋である賀茂家だけど、本家筋の方の子供は中学生だからここにはいないのよ。今賀茂で優勢のお家は
安倍氏のようにどうやら苗字は変わらなかったようだ。
「お初にお目にかかります。私は土御門家分家の当主 泰寛が妻の優鶴と申します。こちらが我が土御門家の長子 春明と申します。以後御見知りおきを」
その後に頭を下げて礼をする。
一度見ているので今度は遅れることなく礼をする。
「
母子共に頭を下げる。
女当主の傍らに座った少女の髪色はまるで、カラスのような艶やかな黒髪で思わず見惚れてしまう程であり、よく視てみれば強力な日の精を宿しているようでその本質は、大空を自由に飛び回る鳥を幻視する。
賀茂家で鳥。それに日の精――太陽の精という事は恐らくは大精霊や
土御門本家の姫――
これ程強力な存在がこの世に2人もいる事を考えれば、土御門家の予言にも大いに信ぴょう性が増すと言った所だ。
「……儀礼的な挨拶はここまでにしませんか?」
――――と鳥羽家当主の美緒が提案する。
「えぇもちろんです」
と母も答える。
「その子……春明君と言いましたか。君は随分と色々なモノが見える良い眼を持っているようで、術者としても母としても嬉しい限りです……」
コイツは俺を警戒しているのか。
それを聞いて母は頭に疑問符を浮かべている。
「……」
「春明君。君が視た通りこの子は神霊の御霊の一部を持っています。姿は視えますか?」
美緒の言葉で俺は隠し立てをする事を諦め素直に話す事にする。
「――――鋭い瞳と嘴を持った
俺は霊視しているのか。
何者かに肉体の制御を奪われ、ただ人にも御言葉が伝わるように言葉を話す発声機の役割を負わされている。
恐らく今の俺の肉体――特に瞳は霊的なモノをに関する感受性が高く、何かカギになるようなものを視てしまうと「神々の世界とこの世の間」に接続して、巫女のおこなう神憑りのように一時的にそちら側とこちらを繋いでしまうのだろう。
「――
言葉を発し終えた瞬間。強力な脱力感や倦怠感と言った不快感に襲われて思わずカーペットに倒れてしまう。
「春明!」
母が叫ぶが気にしない。
父と練習して書いていた治癒府をポケットの上から、霊力を持って腿に張り付けて無理やり立ち上がる。
足が震えている。
「見事です。土御門春明! あなたのその瞳まさしく仏教において語られる
鳥羽家当主はたいそう俺の事が気に入ったようだ。
「春明もしかして私達よりセカイが視えているのね。まさかそこまで才能があったなんて」
母も母で俺の才覚に関心している。
確かに神憑りをしたことは事実だが前世では、結婚していても可笑しくない年齢ではあった。いい年した大人が褒められてもむず痒いだけだ。
屈んで俺の目線に合わせてゆっくりと話す。
「この子も巫女として高い適性があってね。こんな予言をしたの……「大きな災いが幾度もこの日の本を襲うであろう。同じ運命を背負いし童ありその者の助力あれば災い退ける事叶うであろう」とこれを聞いて私は、力を持った予言の子を探す事にしたの。きっとそれが貴方……春明君よ!」
そう言って美緒さんは俺の手をギュッと握る。
あ、あれっれれーおかしいぞー ついさっき同じような予言と同じように「娘の力になって欲しいの」と言ったような事を同じようなシュチュエーションで言われた気がする。
「――――土御門家の祖である安倍晴明は、
ここでまたつい先ほど聞いたようなセリフが、鳥羽家当主の口から発せられる。
そしてその突飛な発言に驚かなかった事を不信に思ったのか、ヒートアップしていた美緒さんがクールダウンする。
「実は……」
母が先ほど本家土御門家から聞いた予言の内容を説明する。
「……なるほど。ほぼ同じような予言が先代土御門家当主によっても、たらされていたという事ですか……確かに先代は優秀な星読みでしたから。しかしその予言を祓魔師間で共有しなかった点については問題ですね。」
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『あとがき』
読んでいただきありがとうございます。
本日から中編七作を連載開始しております。
その中から一番評価された作品を連載しようと思っているのでよろしくお願いします。
【中編リンク】https://kakuyomu.jp/users/a2kimasa/collections/16818093076070917291
【次回連載予定作品】のリンク
https://kakuyomu.jp/users/a2kimasa/news/16818093077299783210
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