第4話 セキセイインコ

俺は今、セキセイインコを飼っている。


 


飼い始めて大体、5年くらいだろうか。


名前はセラ。


最初は言葉を覚えさせるのが面白くて、色々と言葉を覚えさせていた。


 


俺の名前だったり、アニメの決め台詞だったり。


でも、まあ、それも3ヶ月くらいしたら飽きてきて、言葉を覚えさせることはしなくなった。


だから、セラが話すのは「タダイマ」「ツカレタ」「オヤスミ」「オハヨウ」みたいな、俺が独り言のように言う言葉だけだった。


 


そんなある日の休日。


俺が部屋で漫画を読んでいたら、いきなりセラが「イタッ」って言い出した。


最初は「板?」と思って、変な言葉を覚えたなぁという感想しか抱かなかった。


 


気にせず漫画の続きを読んでいたら、今度は「イタイッ」と言い出したのだ。


つまり、「板っ」ではなく「痛っ」だったわけだ。


 


にしても、俺は「痛っ」とか「痛い」なんて言葉は、最近は言ってない。


アニメの台詞かなんかだろうか?


少し不気味に思いつつも、その日は気にするのを止めた。


 


そして、その次の週の休日。


セラがいきなり「イヤ、ヤメテ」と言い出した。


 


これには背筋がゾワッとした。


 


断言してもいい。


俺は最近、セラの前で「嫌、やめて」なんて言葉を言ってないし、アニメでもそんな台詞が出てくることはなかった。


 


……まさか、誰かが家に侵入している?


 


俺は慌てて防犯カメラを買って、色々な場所にセットした。


また、念のため、アニメを見るときはヘッドフォンをするようにした。


 


数日が過ぎた頃。


セラがいきなり「アハハハハ」と笑い出しかと思うと、今度は「オネガイダカラ……」と言い出した。


 


俺は慌てて防犯カメラを全部チェックした。


しかし、俺以外に不審な人物が写っているということはなかった。


 


そのことに安心はしたけど、今度は、じゃあ誰がセラに変な言葉を教えたか、ということになる。


次に俺が疑ったのは、いわゆる怪奇現象だ。


つまり、幽霊の存在である。


 


ここに入居するときに、一応は調べたが、改めてしっかりとここが事故物件じゃないかを調べてみた。


 


結果はシロ。


 


この部屋はもちろん、アパート全体、そしてアパートが建つ前のことも調べたが、心霊現象に繋がるようなことはなかった。


 


それからもセラは「タスケテ」や「シニタイ」などと変な言葉を言い始める。


 


眠れない日が続いた。


いや、眠るのが怖かった。


時々、ホテルに泊まって寝ていたくらいだ。


 


そして我慢の限界に差し掛かった頃。


セラがはっきりとこう言った。


 


「見つけたぞ」


 


俺はその日のうちに引っ越しをした。


 


あれから3年が経つが、それからセラが変な言葉を口にすることはなくなった。


ただ、今でもセラがしゃべったときは、ビクッとしてしまう。


 


それにしても、一体、あれは誰の言葉だったんだろうか。


 


終わり。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る