第2話 さいころ
うーん。
これって、怖い話になるのかな?
他人が聞くと怖いどころか、なんだそりゃって言うかもしれないね。
地味だし。
でもまあ、時間があるなら聞いて欲しい。
実際、俺は怖いしさ。
君はサイコロって知ってる?
そうそう。1から6までの丸が書かれた、正六面体のやつね。
あれさ。1が出る確率ってわかる?
うん。そうだね6分の1だね。
じゃあ、2回連続で出る確率は?
そう。6の2乗で36分の1だね。
3回連続だと、さらにそこに6を掛けていくって感じ。
で、ここからが本題なんだけど、俺の家にね、1しか出ないサイコロがあるんだよね。
は? 何言ってんだ、お前、って思ったよね?
しょうがないよ。逆の立場なら俺だって思うもん。
単なるイカサマだって思うかもしれないかな?
でもね、違うんだよ。
だって、そのサイコロで1が出るのは俺だけなんだもん。
他の人が振るとさ、普通に色々な目が出るんだよね、確率通りに。
でも俺だけは絶対に1しか出ない。
何十回やってもだよ。
最初はさ、おもしれ―って思って、みんなに見せてたのさ。
けどまあ、すぐに飽きられたよね。
地味だし、なんか細工してるだろってさ。
じゃあ、なんかこのサイコロを使って儲けようなんて考えたこともあったけどさ。
儲からないよね。
サイコロを使う勝負なんてチンチロくらい?
でもさ、それでも1こしかないなら、意味ないよね。
それに段々、不気味に感じちゃってさ。
だって、もう10000回以上は試したんだよ。
で、ずーっと1しか出ない。絶対に1だけ。
不気味じゃない?
だから処分しようかなって思ったんだ。
だけどさ、ふと、思ったんだよね。
処分したらどうなるんだろうって。
だってさ、確率的にはもう天文学的な数字だよ?
宝くじで考えたら余裕で10回以上は当たってるんじゃないかな。
それでさ、もし、サイコロを処分した時に、今までの分の不幸が返ってきたらどうなるんだろうってさ。
確かに考えすぎかもしれないよ。
逆にサイコロが俺の運を吸い取ってるなんて考え方も出来るかもしれない。
……いや、いくらなんでも俺がそこまでの強運の持ち主なんてことはないと思う。
サイコロを手に入れる前も、幸運だったかって言われると、そんなラッキーなことは全然なかったし。
だから、今も、ずっと家のタンスの奥に入れてあるよ。
絶対に転がらないようにして。
これで俺の話は終わり。
ね? 地味だったでしょ?
でもさ、実際に君が俺の立場だったらどうする?
処分する? 持ったままでいる?
終わり。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます