逢坂君と語ろう
1話
お~、ついに、わいの番が来たみたいやな。さあ、語るで~。
「おいおい、ちょっと待て。お前が本気で語り出したら、余裕で何万字とか超えちゃうじゃねえか」
そりゃ、分かっとるで。わいのとこにも「巻き」の指示が来とるし。思っとったよりも、時間がかかってるらしいんやて。
「おれの所為か。おれが雑談ばっかしてた所為か」
わいも雑談に乗っちゃったしなあ。
「そういえばさ、この話は何なんだ? お前が語り部ってことは確かなんだろうが……」
ああ、この話は所謂ブレイクタイムっちゅうやつやな。わいと秀で只管、雑談や。
「更に雑談をするのか。止める役目の烏丸がいないとなると、本当にエンドレスで続きそうだよな。ダラダラと」
そうやな。でも数千字くらいで終わる予定やで。
「えっ、そうなの? あっ、今気付いたんだけどさ、おれ今、地の文と会話してね⁉ お前の特殊スキルを会得してね⁉」
今だけやで、今だけ。この謎の特殊空間の中だけやって。それに、これはただ、どっちが話してる方なのかを見分けるためのもんやし。「」がある方が秀、ない方がわい。
「口調で分かるだろ、そんなの」
いや、秀がわいのモノマネをしないとも限らへんやん。
「しないって」
で、こっから唐突に雑談に入るねんけど。じゃあ、早速わいが百人一首について……。
「却下」
えー、ひどいなあ。でもまあ、語る内容は変えるわ。……じゃあ話の時系列に従って「もし文豪が現代に生きていたら、バレンタインデーに一番多くチョコを貰えるのは誰か」で。
「何だよ、そのピンポイントな話題。作為を感じるぞ」
そこは、あんま気にせんといて。……で、誰やと思う?
「分かる訳ねえだろ。文豪のイケメン度やらモテ度やらはもちろん、名前すらも、ろくに出て来ないんだから」
芥川龍之介くらいは知っとるやろ。教科書にも載っとった「羅生門」の作者やで。
「あー、知ってる。一年の時に読んだな。最後、婆さんの着物剝ぎ取ったやつか。……で、何?
そいつはモテたのか?」
まあ、そうやな。今でいうストーカーみたいなのもいたっていうし。
「有名人は大変だな」
あとモテたらしい文豪は太宰治やな。「走れメロス」とか「人間失格」の。
「メロスは中学の時に読んだな。にしても、対照的なタイトルだよな、同じ作者が書いたにしては」
そうやね。太宰は気分の浮き沈みが激しかったんちゃうん? 何回か自殺未遂もしてたようやし。あー、あとは愛人に頼って生活してたとか。
「ヒモ男じゃねえか」
秀やって美和子のヒモみたいなもんやろ。
「ヒモと下僕を一緒にすんな。おれはちゃんとした契約の下でやってんだ」
そういや、そんな設定やったね。
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