5話
「ていうか、おれ達って超器用!」
ケーキ作りの余りの手際の良さに、思わず叫んでしまった。
「意外と簡単だったね。レシピ見れば、誰だって作れるものだね」
「白鳥は作れないけどな」
「美和子は不器用やからな」
料理なんて、ほとんどしないから、家庭科の調理実習で悪戦苦闘していた。
「白鳥さんは、そこが可愛いんじゃないか」
「そういうと思ったよ」
とりあえず、ケーキは冷蔵庫に入れておいて、ツリーの飾り付けに入る。
時間は午後6時を回っていた。白鳥が帰るまで、あと数時間くらいだ。
「そういえばさ、高村君。君と白鳥さんは、去年は二人だけだったんだろう。とてもとてもムカつくことだけど、君は去年どのようにクリスマスを過ごしたんだい?」
白鳥と出会った最初の一年、つまりまだ高一だった頃のこと。薫とはまだ会ってないし、烏丸の秘密を知る前、今となっては懐かしいともいえる、あの頃。
それを思い出しながら、答える。
「あー、うん、実は去年、おれは白鳥の誕生日を、うっかり忘れてたんだよな。『メリークリスマス』っていうメールをしただけで、自分は誕生日にもクリスマスにもプレゼントを貰っておきながら、な」
年賀状にわざわざ「12月25日は私の誕生日だったのだけれど、どうやら忘れていたようね」という文句が書かれていて、新年早々、謝罪しに行ったことは苦々しい思い出だ。
「サイテー」
烏丸が軽蔑の視線を、おれに向ける。
「そう言われても仕方はないと思うよ。だけど、だからこそ、今年はちゃんと祝ってやりたいんだよ」
散々、話を脱線させたりと回り道はしたけれども……。
白鳥が喜んでくれれば、おれはそれで満足なのだから。
数時間後。
白鳥邸の玄関扉が開く音がする。
軽やかな足取りが、真っすぐこちらに向かっている。
部屋のドアが開かれ……。
「ハッピーバースデー」
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