4話

「もしかしたら、あの一万円で小さいケーキを作って、残りは慈善団体に寄付っちゅうんが正解だったりしてな」

「正解って……。そんな人間性を試すテストみたいな……。あー、でも、あいつはけっこう募金してるな。コンビニでお釣りもらって、小銭全部レジ横の募金箱に入れてたんだよ、当たり前のごとく。で、聞いてみたら『小銭が沢山あると邪魔だから』って答えるんだぜ」

「白鳥さん、カッコいい! まさに、慈悲の女神!」

「………………」

 何かもう、ここまで来ると、変な宗教にハマっちゃった奴みたいだな。白鳥教信者って感じ。

「何、固まってるの? さっさと決めなよ。ほら、あそこのお店とかいいんじゃない?」

「あ、はい」

 烏丸が指し示した店は、いかにも女子が好きそうなファンシーな雑貨屋だった。可愛らしい動物のぬいぐるみやクッションが置いてある。全体的にピンク色。

「えー、でも白鳥には合わなさそうだぞ。あいつ中二病で、ゴシック好きだぜ?」

「いや、美和子は意外とああいうのも好きやで。部屋とか可愛いぬいぐるみがあったで」

「え、嘘⁉ 二年近く下僕をやってきて知らなかったよ、そんなこと。ていうか、お前、白鳥の部屋をみたことあるの?」

「え、秀は二年近くも下僕をやってきて、まだ部屋も見せてもらってないんか?」

「ただの一度もねえよ」

 衝撃的事実発覚って程でもないが。だって、別に彼氏でも何でもない、ただの下僕野郎を部屋には入れないだろうから。そういえば、おれは白鳥邸の見取り図は知らないな。主に、客間とトイレと厨房くらいしか使わないし。

「今度、見せてもらうとええで」

「そんな恐れ多いこと出来るかよ」

 何か、おれも白鳥教信者みたいなこと言ってるな、恐れ多いとか、白鳥様は神様かよって話だ。

「じゃあ、わいはこれにしようかな」

 薫は羊の抱き枕に決めたようだ。確かに、白鳥がこれをギュッと抱きしめていたら可愛いかもしれない。こういうのをギャップ萌えというのだろうか。

「わ~、これを白鳥さんがギュッとしてるのを想像すると萌えるね!」

 イケメン烏丸から「萌え」とか聞くのは軽くショックだぞ。ギャップ引くわ。

「それで、秀は何にするん?」

「えーっと、おれは……、これにしよっかな」

 店内をザっと見回して、何となく目の付いたマグカップを手に取る。水玉模様のシンプルで無難なものだ。

「テキトーに決めるんだねえ」

「お前に言われたかないよ」

 そうして、ケーキの材料と、ついでに弟達へのプレゼント(自腹)も買って、白鳥邸に帰った。後はケーキ作りと飾り付けだ。


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