第2話 捕まった勇者

「ふがー! ふがー!」


 今俺は、猿ぐつわされて、縛られている。

 要するに捕まったのだ。

 そして、王城に連れ戻された。連行されたんだ。


「ねぇ? ウォーカー君? 何で逃げたのかな~? 今日の異界の勇者の女の子さ~、君のこと慕ってたよね~?」


 リナリー様?

 その軽蔑の眼差しは、なんですか?

 それと、俺に座らないでください。

 今日の昼の勇者アカリも、俺に軽蔑の視線を送って来たな。リナリー様が、腕を組んで来たから、ああなったのに。

 女神国の一団も、俺個人に憎悪の目を送って来てたし……。


「……生きていると信じて、迷宮ダンジョン攻略に全員一丸で当たっていたのに! 他国の王女さまと楽しく過ごしていただなんて! 信じらんないよ!」


 アカリさん……、違うんです。誤解なんです。俺は、低賃金で静かに暮らしていたんです。

 でも、俺に発言権はなかったから、怒ったまま帰って行ったな。

 帰ったんだよな? 武器を取って襲って来ないよな……。

 そして……、捕まった王族には簀巻きにされて座られている。

 なんかもう……、この異世界で味方がいなくなった気がするよ。


「リナリー王女さま。ご用意ができました」


「ほう? リナリー……、何を用意したのだ?」


 目の前には、皇帝陛下がいる。

 俺も、リナリー様に何をされるのか……、一応聞きたい。ろくなことはなさそうだけど。


「お兄さま~。部下に命じて、拘束系の魔導具を集めさせました。種類は、私も今から聞きま~す」


 ハイヒールで、俺のお尻をグリグリしている。お願いだから踏まないで。俺にそんな趣味は、ないんですよ。

 リナリー様も怒っているんだな……。

 でも、拘束系?

 俺は、生きたまま何をされるんだ? 冷汗が出た。

 衛兵が、説明を始める。


「まず、追跡魔法です。地の果てまでも感知できます。二度と見失うことはありません。帝国最高峰の技術と自負しております」


 断言しないでください。


「ふむふむ。妥当だね~」


 おいおい……。逃げらんないじゃん。いや、俺のスキル次第では、パーティーメンバーに押し付けられる……か。動物に押し付ければ、……行けるか?


「それと、呪いを数種類ご用意いたしました」


「呪いの種類は?」


「リナリー様の体液を、一日一回は取らないと、精神の安定を崩す呪いとなります。まあ、リナリー様に触れるだけでも効果をリセットできるみたいですが。これが、最善と判断いたしました」


 血の気が引く。麻薬かよ……。異世界定番だけど、それR18じゃない?

 運営に怒られない?


「ふっ……」「あはは……」


 王族が、笑い出す。


「異界の勇者を飼いならすか。面白い、リナリー、好きに扱って見せろ。功績を挙げれば、文句は言わん」


「もちろんですわ、お兄さま。女神には返しません。そして、二度と逃がしません!」


 待て~。待ってくれ~!

 モゾモゾと動くけど、誰も俺の話など聞いてくれない。

 もがき苦しんでいる俺を見て、衛兵たちの嘲笑が更に増える……。


「それと、魅了・服従・敬愛の精神感応系を一通り……。明日からは、リナリー様がいかようにでも調教可能かと」


 なんか、針っぽいのが一杯あるんですが? それを、何処に差すのですか?


「さあ、儀式開始と行きましょうか~」


 リナリー様が合図を送ると、衛兵が俺に魔道具を取り付けて来た。

 やめて~、頭に針を刺さないで~!

 そして、魔法が発動される。


『うっ……。意識が……』


「うふふ。目が覚めたら、楽しませてあげるからね~。期待しててね~」


 リナリー様が、俺の頬にキスして来た。


『……俺は、ここまでかもしれない。せっかく女神国から逃げられたというのに。静かに暮らしたかったのに……』

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