第19話

あの子の鳴き声は、なぁーん、で。

その次はなッ。

最後は3回。空気を、がああっと吐き出した。

それが、あの子の立派な、オス猫の最期だった。


涙は、出なかった。見送る前、直前に泣いたから。

堪えてもしまったから。


半目の開いた目を閉じた。

空気を大きく吐き出した口を、頭を持ち上げてなんとか閉じさせてやる。綺麗な死に顔にさせてやりたかった。これから固くなってまた一瞬柔らかくなって、永久に固くなる。死後硬直とは、そういう物だった気がする。まだ固くなる前に突っ張った足も優しく揃えて、立派だった内臓と筋肉の詰まったおなかから、すっかり縮んでしまった身体を撫でる。

また撫でる。これがノエの最期。


私だけとの最期。


サバトラはあのときどうしていたか。

どれくらいゲージに戻して最期の息を吐き出すまで一緒にいたノエとの時間がたったのか。


LINEで家族には今日が山だと伝えていた。痙攣止めをうち、まだ生きていることも。写真を送ってくれという家族もいた。まだ生きているうちに。


しかし、カメラを向けた瞬間から、もう絶命した猫に見えてしまうくらいに、ノエは間際だった。


一生懸命に呼吸をしている、動画を短く撮り、これが今の様子だと伝えた。


そのあと少しして、ノエは直視していない時に最期の一息を吐いて、壮絶な様に絶命した。

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